悪代官
佐渡徹は智穏の病室へ行った。呆れるほどの過去しかないのに話を聞いてくれるのかという不安ばかりある。息子から教えてもらったメモをもって。病室につくとノックして入った。
「おじさん。優斗から聞いてきたのか?」
「そうだよ。優斗しか聞く人がいないだろ。ともはなんの仕事をしてるんだ?」
「刑事。仲間がいるんだ。守ってくれているし。」
徹は下を向いた。堂々として向き合えない。苦しみを与えたとしか思っていないからだ。養父としての役割はしていなかったのだ。
「おじさんは会社行ってるんだろ。おばさんとの関係は顔を見た感じいいとは言えなそうだな。」
「あれからな、権限をおばさんが完全にもたれてね。バイトをして使った額以上の金額たまったんだ。それに登録がお前になってるから受け取ってくれ。」
徹から通帳を受け取った。2人から言われたからということもある。智穏の表情は明らかに社会などを恨んでいた時代とは大きく違った。
「おばさんって確か税理士だったはずだよね。威勢の良かったあの頃のおじさんに会いたかった。こんな元気のない姿見たくない。」
「お前に悪いことしてたのに・・・。そんなこと言わないでくれ。謝りたいんだ。酷いことしてすまなかったと。」
会話の中に寂しさを感じるものであった。ドアの開く音がした。団体の音であった。
「おじさん。会って帰ってよ。」
4人の青年が立っていた。信頼が強くあるため睨んだりしていない。
「佐渡徹。優斗の親父だ。」
「悪代官の登場って訳か。」
和翔は口悪く言った。思ってくれてるからそういってしまうのだろう。潤紀も雅也も優唄は見守るような表情だ。
「そうだ。養子を金のためにとることにしてもう家族間に権限を全くもっていない。あの頃より会話は減ったよ。」
「苦労してんだな。あんたも。智穏を守ってくれる人は十分にいる。罰が来たと思って生きるんだな。」
「全く。和翔は。和解はしたからさ。キチンと見守ってやってくれ。」
和翔は静かにうなずいた。課長としての生き方はわからないが人としての生き方もろくすっぽわかっていない。心はこれで構わないと思っている。
「雅也は資料をもらってきたか?」
「簡単にもらってきたよ。」
徹は静かに病室を出た。会議をした。死神を止める方法を考えているのだ。
「養護施設はいいところを出たようじゃない。必ず理想論を抱えていて解決しようとしたが死に興味をもっていったとしか考えらえれない。」
「捜査一課は別事件を追いかけているから手を付けられないって。」
捜査をすることの大変さを改めて知った。




