従弟の贖罪
和翔が見せた遺書は心の中に消えなかった。ベンチで4人は仕事をしているとある若い男性が立っていた。申し訳なさそうな表情のまま。
「貴方は誰ですか?」
「相宮智穏の従弟の佐渡優斗です。話を聞いていませんかね。育てられたって。」
「えぇ、聞いてますよ。あまりいいといえる環境ではなかったこともね。誰が始めたことなんですか?」
優斗は悪気がない顔をした。明らかに始めた人を知っているようであった。
「親父ですよ。親を亡くしたあいつから金をむしりとるために引き取ったんです。財産も別の親戚にとられて何も得ることができなかったということがあったんです。はっきり言えるのは相宮家族と俺たちは関わりはほとんどなかった。高校、大学の時バイト代をむしり取っていてそれで家族旅行をしたのを知ったおふくろが金を返すよう言ったんです。子供手当とかそういうの含めて全額。」
「貴方の親はなんていう人なんですか。」
他の親戚も財産を返す手立てをしているという。通帳を出した。とんでもない額にまでなっていた。これでもまだ足りないといっている。
「君の親父さんは智穏に謝罪したのか。してなかったらいけないな。あいつはどう思っているかわからないけど。」
「謝罪なんてものはしていません。だから、俺はともと会って解決したかった。あの頃を笑って話せるのか。苦しみながら話せるのか。それを知りたかった。」
集中治療室で智穏の手が動いたのを見た。希望を知って動いたのか和解を求めて動いたのか。医師と看護師が来て病室に移ることになった。まだ個室ではあるが少しは進歩したのだ。
白い天井が智穏の眼に映った。声は聞き覚えのあるものばかり。
「智穏、よかった。」
「優唄とかすまないな。署長、一課長、鑑識長にも伝えてくれるか。俺はお前らに頼ることを忘れたんだ。写真とか見たのか。」
「お前は1人じゃない。叱られるよ。写真みたさ。俺らもキチンといた。それで充分。」
優斗は口を挟めるような感じではなかった。あの悲惨な過去を受けた人間ではなかった。いくらかの試練を乗り越えることができた人間の表情だった。
「貴方も話せよ。邪魔なら俺たちは出ていくさ。」
「じゃあお願いします。2人きりで話したい。」
4人は出て行った。優斗は何から話せばいいのかわからなかった。智穏は怪我に目を向けなかった。
「優斗。元気してたか?ってかお前なんの仕事してるんだ。」
「小さな町工場の作業員だ。養護施設に渡すためのストラップを作ってる。」
他愛もない話をギクシャクしながらした。




