死ぬという覚悟
4人は智穏を探すべく手段を得ようとした。鑑識が動いてくれるのはわかっていたが自分たちで見つけたかった。潤紀は携帯の電波から居場所を探る。和翔はパソコンで遺書めいたことを書いたことはないかと探している。アジサイのことで起きた悲劇を解決するために。
「あいつ、海とかの近くいやがる。それに何時間も動きがない。」
潤紀は急がないといけないと思った。死ぬと考えた奴の動きとしか思い浮かばなかった。救えるのかとも。
「遺書を今書いている。携帯のメモに。内容はわかる範囲だけど俺のパソコンに移った。読まずにあいつを救うのが一番いい。」
4人は車に乗った。1人足らないと思いながら。寂しさや悲しさ、虚しさを感じるのは早すぎる。静かな車内がむなしかった。自分の活躍する場所を持ったという気持ちは全くなかった。ただ死なせたくない。ラジオも音楽も悲しみに満ちたサウンドに代わるからかけたがらない。
「智穏、どうして二課の仕事を手伝ってるって言わなかったんだろうか?普通ならいうはずなのに。」
雅也のつぶやきは独り言のように小さかった。大丈夫だよといってくれる人は乗っていなかった。署長から和翔に電話がかかった。
「智穏を探しに行っているのか?あいつが署長室に来た時に言ったんだ。お前らだけでもどうにかしてくれって。多分、親の真相を知ってくるってしまったのかもしれない。お願いだ。あいつをできるだけ生きて返してくれ。」
「必ず生きて帰ってきます。だって俺たちの課長ですもん。」
和翔は強く言い切った。守るものを改めて思い返した。信じることが大切だと思った。気づくと目的地ついていた。誰もいなかった。遅かったのかと思ったが車から降りてみると血まみれの人を見つけた。面影が智穏だった。息を少ししていた。和翔は智穏を抱えた。
「智穏。返事をしてくれ。」
「和翔か。潤紀と雅也、優唄もいるんだろ。もう俺は終わりだからほっといて死神の事件を頼んだぞ。」
生きるという言葉を忘れた智穏は見たことがないほど小さかった。救急車が来るまで息をしていればと思ったが来たときにはしていなかった。病院についてすぐ手術がなされることになった。
「智穏はここのまま警察辞めるのかな?俺たちに迷惑だって。」
「そんなことさせない。僕は死神の事件が済んだら吉崎さんとかと食事しようっていってるのに。」
潤紀の声が3人の胸の中に響いた。生きてほしいと思った。けど担架で運ばれた姿が生きることを拒否しているように思えた。