災難
優唄は特殊犯罪課に行った。大体最後になるのはわかっていた。扉を開けると3人しかいなかった。
「智穏は?あいつきてないのか。」
「俺が最初になるなんて珍しいんだ。智穏は休んだことなんてさ、最近ないし。」
和翔はいつもの机を見ながら言った。病気にかかったら必ず連絡をくれるはずだ。なのに携帯とにらめっこしても返事がないのだ。雅也は潤紀に署長を呼ぶように頼んだ。明らかに何かがおかしい空気を感じとっていた。ドアのノックする音がして振り返ると鑑識長であった。
「相宮君、来てないのね。昨日、警視庁を出ていくのに出会って聞いたの。貴方たちに隠れて捜査二課の手伝いをしてるんだって。」
潤紀は思った。捜査二課の手伝いをしたのは死神の事件と関係あるからに違いない。データを扱うのはきっと鑑識である。
「相宮が来てないということは・・・」
署長の声色がいつもより怖く感じた。和翔はパソコンをいじっていた。智穏が使うパソコンも触っている。
「被害者はアジサイの園長だったのだよ。」
雅也は資料室へ駆け出していた。特殊犯罪課はいつものように落ち着きはなくパニックというほど慌てていなかった。彼は交通事故の案件を覚えていた。それに相宮という珍しい苗字であったため、頭の中に記憶されていた。帰ってくると和翔は携帯の電波とかけた場所がのっていた。
「花通りにいて徒歩で駅まで行っている。明らかに智穏の行動としてはおかしい。」
彼の行動には見えないものを感じた。
「お前らは智穏を探せ。過去の交通事故と関わりをもっている。それに課長だろ。死なせるな。いいな。」
署長は力強く言った。和翔も何かかくしているように感じた。2人が立ち去った後、和翔に声をかけた。
「お前、僕らに隠してることがあるだろ。いえよ。それじゃなきゃ始まらない。」
潤紀の言葉に彼は悲しそうな笑みを見せた。この世の終わりを知っているかのように。
「俺は捜査二課1係にいた頃、智穏の近いところで動いてた。だからあいつが変わっていくのを見てた。最初は一匹狼だった奴が仲間に囲まれることを知って仲間思いになった。けど、あの事件で少し自暴自棄になった。此処にきてなくなったと思っていたけどただの幻想に過ぎなかったんだな。」
和翔は悲しみに満ちた顔をしていた。まるで死んでしまったかのように。沈んだ空気を換えることは難しかった。そこに一課長が入ってきた。
「お前ら、動け。後悔は見つけてからにしろ。今のあいつは死ぬのに躊躇なんてしてないんだからな。死神の事件を解決するのは5人だ。」
一課長の声が響いた。立ち止まっている時間なんてなかったのだ。智穏の笑顔を思い出した。あいつの手で奪ってたまるかと。




