仲間への責任
伊吹はアパートを出た。会社のためであるが、他にも理由がある。開いていないパチンコ店へ行く人を見た。孤独で歩いたビルの道に似ていた。会社についたのはいつもよりは早かった。同僚は何も気にすることはなかった。前は会って語りつくしたかった養護施設の仲間も自分の上をいってる気がした。会いにくいのはそれだけでないのだが・・・
雅也は屋上に上がった。智穏は町を見ていた。空に映る景色の色は美しかった。
「和翔はこもってたか?」
「いいや。データを探しつくして休憩してる。」
「そうか。死神の事件が済んだら宴会みたいにするか。最初の頃はよくしていたけど最近してないもんな。関係は少し変わったかもしれないが、根本はみんな変わってない。」
雅也は声や言葉に聞き入っていた。扉の独特な音に2人は反応した。3人が立っていた。潤紀の笑顔や和翔の呆れた顔、優唄の真顔があった。
「署長が呼んでる。智穏。」
「わかった。行くよ。」
名ばかりの課長を先頭に4人はついていった。資料もなく前科のない人間が起こした悲惨な事件。智穏は速足で署長室へ行った。ドアをノックした。
「あまり仲間に迷惑をかけるのは良いとは思わないな。それより死神に動きはあるか?メールも爆破も起きてないようだが。」
「死神はメッセージを残そうとしているが、愉快犯に代わってしまったと読んでます。推測ばかりが先行してホシを見つける手立てにもなってない。キーワードの総理の理由を探さないといけない。何も手がかりがなさすぎる。もし解決できなかったらその時は署長が俺だけに罰を与えてください。あいつらは関係ない。」
署長の手には小さく塊を作っていた。思うところがあるのは重々承知の上で言った言葉であった。
「君はそういうところは変わってない。お前には苦しいほどの罰は受けている。それ以上を望んでどうする。あいつらから笑顔を奪うつもりか。苦しんでもがいてここにいることを知る必要がある。自己犠牲にはしるのはいい加減にしろ。」
署長の強すぎる言葉に何も言えなかった。4人の笑顔を奪うことは一番してはいけないと思った。苦しみは1人で抱えるほうがいい。
「俺には重すぎる仲間でもあるんですよ。特殊犯罪課は。過去を見せないように生きようとしていたから。4人はその行為がないからいい。もう抱えるものを持ちずぎてくるってしまったのかもしれません。権力として課長というものをもってる。その責任くらいは持ちたい。」
署長が沈黙を作っている。智穏は出ていこうともしなかった。