仲間を考える
和翔と優唄は久しぶりに一緒に飲みに行くことにした。事件を追いかけていると自分を忘れてしまうときがある。5人でのみに行くときは必ず行く定番の店だ。カウンターではなく個室に入った。
「優唄、親に会ってるのか?いくら縁を切ったっていてもさ。」
「おふくろにはあった。親父は会うべきじゃないって言ってきたから会えなかった。苦労したことを恨んでるわけでもないのにさ。俺から仕送りして少しでも返せたらと思ってる。」
和翔はビールを静かに飲んだ。彼のいた学部はハッカーなど犯罪者を作り出す学部であると浸透したため、今はなくなっている。
「裏社会で働こうとか思わなかったのか?ほとんどの卒業生がいるんだろ。」
「大学3年の時、悩んだ。その時期に親友を失った。裏社会で働いて抜けようとして殺されたらしい。そいつの両親から辞めてくれって言われて警察に入ろうと決めた。」
コードネームをもっていたほどの人間だった。闇に生きる人々を救おうと思ってもいる。親友の死を気づくことさえできなかった自分に対する小さな抵抗でもあったのかもしれない。
「お前が行かなくて良かったよ。一番手ごわい相手になっていたかもしれないな。それにしても捜査一課どうして入らなかったんだ?経歴とかからして出世コースを進めたはずだぞ。」
「そんなくだらないことに使ってほしくなかった。出世したって人を救ったかなんて関係ない。だったら被害者と加害者両方を救うことができればと思っている。此処にきてよかったよ。苦しみも虚しさもわかってくれる仲間ばかりだ。」
組織に染まることが正しいわけではない。教えられることによって成長していく。小さな課であることを得だと思ってしまう。
「5人でのみに行くか。死神の事件がすべてを支配してる。捜査一課14係は何をしているんだろうな。一課長の声を聴くことなく動くらしいから。」
「確か行方不明者の捜索とかしているらしいよ。作業程度のこととかできないように署長が圧力をかけている。」
和翔だけでなく優唄も特殊犯罪課にいることに感謝している。
「智穏は死んだりすることはないよな。たまに屋上にいるらしい。鑑識担当している人から聞いた。近くに階段があるからわかるんだって。」
智穏は課長という任務をしているが足で稼ぐことの大切さをよく知っている。意見を聞いて必ず反映させようとしている。天才だけの集まりではここまで絆を感じることはなかっただろう。1人の存在の大切さを、仲間の大切さを肌にしみた。