頼りになる仲間
特殊犯罪課には3人がいた。雅也は中村にはあって話を聞いているのだろう。
「俺の話は長くなるから、雅也。中村から聞いたことを話してくれ。」
「眞白のユリ園は権力を持った子が必ず1人はいるという。その子から逆らうと虐められるということらしい。環境はよくなかったと思える。」
「6人から探すようにしろ。眞白のユリ園に行きついた子ほど受けやすい。」
智穏の言葉は少し強い。彼は少し間を置いた。これから話し出す内容が辛いものであることを示しているようでもあった。
「俺が捜査二課1係にいた頃に起きた事件だ。前原総理大臣のいたときだ。雅也、総理が殺された事件の資料見たことあるだろ。」
「前原総理大臣殺人事件と関係あるのか?」
「その事件の時、総理の警備をしていた。たった1枚の防弾チョッキで生死を分けたんだ。」
智穏は遠くを見つめて4人を見た。語るべき状態であることは重々承知していた。思い出すように映像が再生された。
相棒は荻の兄貴の学であった。あの事件がある前は家には何度も行っていた。関わりが強すぎたのかもしれない。本音も語りあっていた。正とも何度もあって遊んだりしていた。孤独で過ごしていたことを無くすために。
あの事件の当日、防弾チョッキが用意されていたが1枚だけ足りなかった。智穏は最初着ていなかった。狙われることはないと思っていた。学が着ていたチョッキを渡してきた。捜査一課の奴に頼むから大丈夫だと言われた。警備をする時間は迫っていた。学は結局着ずに警備にあったった。これがすべてを分けてしまった。外に出るとテロリストや凶悪犯も見つからなかった。ほっとした瞬間、学を狙って発砲された。学は胸を打たれ即死だった。前原も警備が薄れた隙に打たれた。その日は何も成し遂げられなかった。学の葬式にも墓にもいかなかった。贖罪として毎年手紙と品物を送っている。
「智穏、捜査一課の時、正と組んでなかったか?」
「組んでたよ。たった1週間だけ。そのあと辞めることを考えていた。署長に止められて今ここにいる。他に聞きたいことはないか?」
和翔は上を向いている。優唄は静かに目を向けている。雅也は頭の中の資料と掛け合わしているようだ。潤紀は椅子に座り込んだまま。
潤紀が声を上げた。
「智穏の育った環境って?」
「両親を事故で無くして従弟の家で育ってられたがあまりいい環境じゃなかった。孤独を肌に感じながら生きていた。俺を変えたのは学さんとお前たちだよ。」
智穏はすっきりした表情で4人を見つめていた。




