過去の証人
雅也は翌日再び鑑識部屋に行った。ノックしてみると声が聞こえた。潤紀がいるのだ。入ってみると機材が大量にあった。
「なんだ。なんか証拠を見つけたか?」
彼の言葉に少し戸惑って笑うしかなかった。机の上になにかのリストがあった。雅也は鞄から袋に入ったものを取り出した。潤紀は驚きを隠せないようだ。
「俺の関係する事件の証拠品だよ。刑事は俺がかくしていることを知らなかった。18年も経て今解決したいんだ。」
「お前ならしょうがないよ。ストラップはこのリストから探せば何処の養護施設かわかる。ただ、指紋だけが心配だ。」
「大丈夫。触れたことないから。これですべて終わると思うと少しほっとするな。」
雅也の笑顔だった。解決しても晴れない部分があるのも承知だろう。謝罪もしなかった捜査一課の当時の刑事に見せつけたかったと子供心から働いたのだろう。
「機械にかけるからな。そういえば、当時の刑事はどうなってるんだ?」
「捜査一課14係の平刑事。けど、自分のほうが地位が上だからってあったら偉そうなんだよ。この事件が出世できなかった原因だったらしい。馬鹿げた話だろう。捜査一課の下っ端のくせによ。」
パソコンに出された名前は一度会ったことのある人間だった。雅也は今更恨むつもりもなかった。後悔しているかどうかを見たいだけだった。運命の歯車が引き寄せたとも思わなかった。その人物は十字架を背負っているのをわかったから。
「雅也は復讐に走らないとわかっているよ。解決しないもんな。虚しさだけ残ったってしょうがないだろうから。一応僕もついていくよ。安心して。」
一致したストラップは眞白のユリ園だった。養護施設で育った人はそうではないと知っている人間がいればすべて語ってくれると信じてるから。
「明日、会いに行こう。ホシには自首してもらう。」
「それがいいよ。円満解決が一番いい。」
2人は頷きあった。




