悲しみの糧
恵に会った後、吉崎に会った。応接室ではなく相談室だった。何時も多くの時間を過ごした気がする場所だ。
「二松に会ったか?」
「はい。今の仕事に対して驚かれました。僕にとって敵としてとらえても可笑しくない相手だからさ。」
吉崎は少し笑みを浮かべていた。子供の成長をまじかで見ている感じがした。心を開かなかった少年が少し変わっていたから。
「警察だろ。全く何を考えて。両親が刑事で仕事のために捨てたんだぞ。なのに、なるなんて。」
「そんな過去もいらないよ。今を生きていかないと。」
潤紀は紙袋を持っていた。恵が託したものだ。思い出を忘れないようにと思ってのことだ。彼は鞄からジッパーのついた袋を出した。ストラップだった。
「ああ、里親に行く子にあげたものだよ。どの施設でもあるさ。これじゃ何処か分からないな。」
「有難う。事件を解決したら今の仲間を紹介するからさ。写真、二松さんにも渡してほしいんです。だって家族でしょ。子供の写真を持ってて何かいけないの?」
潤紀の言葉を聞いて吉崎は大笑いをした。彼から2枚の集合写真をもらった。優しい人たち囲まれて嬉しそうだった。事件が終わるまで会うのは止そうと思うしかなかった。