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仲間への思い
潤紀は応接室で待っているとノックの軽快で独特な音がした。誰か分かってしまうほどの。
「ヒロ。おかえり。帰ってこないかと思っていたから。こんなところにね。」
「恵さんこそいないかと思いましたよ。僕がそんなことを言ってもしょうがないけど。」
恵はコスモスから離れようとした年に幼い子供がいた。名前すら付けてもらっていなかった。苗字を与え名付けた。周りは驚いていた。そんなのどうでもよかった。
「家がない僕に帰る場所を与えてくれた。それだけでもよかった。守ってくれた。」
「それくらいしかできなかった。でも仕事は何してるの?」
「警察だよ。刑事と鑑識。」
「貴方がそんな仕事するとは思わなかった。いい仲間なんでしょうね。」
「良すぎるくらいだ。僕を気にしてくれる。」
潤紀は財布から写真を出した。発足当初のものだ。5人の頼りなさを感じる。
「この人たちならいいわ。優しそうだもの。打ち上げとか行きたがりそうね。この仲間だけならって。」
優しすぎて恩返しはまだできていない。いつかはしなくてはと思った。