これまでの記憶
5人の目線は明らかに違っていた。恨むような眼で佐伯琢磨を見つめていた。
「僕たちの狙いはあんただったんですよ。長年、目をつぶっていた警察官は捕まったので何も言われません。むしろすべて明かしてくれていると聞いています。」
「何処に証拠があるというのかね?」
和翔はビルに証拠を映し出した。DNA鑑定してあるもの、防犯カメラの映像、そして相宮幹治、奏が残した探偵としてのファイル。決定的になるようなものばかりだった。
「あと、言っておくの忘れてましたけどテレビ中継されているのでもう言い訳なんてできませんから。俺たちはあんたの所為でなくなった命を供養したいんですよ。分かってくれます?」
「証拠があったが此処にはないのか?」
「もって来たら絶対処分するのは目に見えているので映像だったんですよ。完全なる証拠ですしキチンと警視庁に行けば見れますから安心してください。」
佐伯は疑っているかはわからないがあることは告げないといけないと思った。警察も見捨てた探偵は近所から信頼されていた人達だった。関係のない人までも殺されたのだと。
「あんたは相宮幹治、奏という探偵を知ってますか?」
「知らないな。」
「やっぱりあんたは屑だね。俺の親父があんたと会って話を聞いたと調査ファイルに書いてあった。知らないわけがない。頼まれた奴も知ってるっていってるし嘘を言ってるとわかっているのにまだ嘘をつくのかい。人殺し。殺人鬼。」
佐伯は言われように怒りを蓄えていたが限界だった。
「俺は人殺しではない。隠し子を突き落としたのは金でゆすってきたからさ。相宮とかいう探偵はそれを探ってきた。邪魔だった。それから事件はすべて邪魔な人間を消しただけさ。」
「国民に人殺しだっていいましたね。それに被害者の息子の前でよく正論っぽく言えましたね。彼には必ず1度会っているはずですよ。」
「なぜだ?」
「甲子園で優勝したしエースみたいな扱いを受けてましたから。覚えてませんか?神崎昇。」
智穏は佐伯琢磨の前に行った。昔の新聞を取り出した。写真と一緒だろうということだろう。
「あの時は偽名を使ってました。本名は相宮智穏。あんたが殺すよう言った探偵の息子です。警察の協力をしていても俺の両親の叫びは聞き入れなかった。数えきれないほどの事件を解決をしても突き放された。だから俺は隠蔽された親の事件を託されて生きてきた。あんたに苦しさなんてわからないだろう。屑が。」
一課長がまだいたのか一発佐伯の頬をぶった。静かになった。事件は解決したのだと思った。
数日後、関係していた人間はすべてを明かした。潤紀は伊吹のことを心配をした。殺人者であってもともに過ごした時間があるからだ。全てにおいても裁判待ちであるのは確かだろう。特殊犯罪課は警視庁にはいないが存在はする。荻の母親にもあったり特殊犯罪課に関わる人達と食事に行った。一つの行動が人の人生を狂わせたのだとまじまじと思った。
「智穏、学さんの墓に手を合わせたのか?」
「あぁ、もう1人じゃないって気づくのが遅かったけどね。」
5人で笑っていた。これまでと違う人生を歩んでいいのだと真剣に思った。