目の印
深夜ともいえる時間帯に町に繰り出すのは珍しいことであった。智穏にとって初めてのところに行くのを偉いし尊敬する人に言われた。都会はネオンが輝いていて星などみようとしないだろう。うるさいほどの事柄に接点を置くことしかできない。情けないしか思うことしかできない。立ち止まったのは地下にあるバーだった。開けてみると1人のがたいのいい男性がいた。
「奥村さん。待ちましたか?」
「いいや、待ってないさ。こっちだって仕事があるんだからね。」
よくわからないカクテルを飲んでいる。詳しくないのは知っているため、勝手に頼んでくれた。ありがたかった。
「智穏君は今の居場所にいるのが楽しいか?」
「どうしてそんなことを聞くのですか?」
「君は何処かで本音を隠す癖がある。あの時だってそうだったからね。忘れることなんてできない態度だったから。」
智穏の表情は何処かリラックスをしている。緊張状態があるのだろうか。奥村は目を合わせない目を見つめようとした。
「今の仲間は良い奴ばかりで楽しいですよ。事件なんて厄介なことが挟まってこなければと思うんですけど、仕事だからしょうがないですよね。」
「仕事にしたのは理由があるはずだよね。君の両親は警察の態度で生死が決まったともいえるからね。この事件が済んだらやめてしまってもいいはずだ。小さな喫茶とか居酒屋とかをやればいいのではないか。」
警察に残る意味もなくなってしまうだろう。下手な行動をさせるわけにはいかない。
「まぁ、考えてみます。ただあいつらは嫌がるのも目に見えてるんですよ。色々抱えてきたことを守ることもできないのですから。」
親の生きた記録は紙でしかない。何に悩み、何に苦しんでいたのか。役に立たないことを目にしてきたのは何時からだろう。
「智穏君、死神については何時から気づいていたんだ?」
「養護施設の資料を見たときにはわかりました。というより確信をしました。だから、始まったくらいですかね。」
死神も同じくらいの苦労をしてきたのはわかっているから早めに止めてやりたいが、総理大臣が偉そうに逃げてばかりなため解決に結びつかないのは極論としか言えない。気づいているフリをして鬼が来るため逃げる。子供以下の行動しかとらない大人のほうが情けない。逃げることは正しいことではない。相手の所為にしたりするだけの卑怯なやり方だ。前にあることに近づかない限り何も解決に向かわない。何時になればわかるのだろうか。くだらないことに時間にかけるのはいけないはずだ。謝ることもくだらないと思っているのだろうか。責任を擦り付けることも正しいと思っているのだろうか。正論っぽく語るほうがくだらないのだと思う。