紙きれの本音
智穏は屋上で日記を見ていた。遺品を残すのは珍しいといわれたことがある。親戚があまり残したがらないのはわかっている。全てということが驚かれただろうと思う。
悪しきものには征伐を、罪なき者に祝福を。
幹治が残した言葉の意味は多くはわからないだろうと思ってしまう。何故大切なものを守るために犠牲にしたのだろうか。
「なんだ。此処にいたのか。皆、探してたよ。」
「潤紀、証拠品はあそこに隠してあるか?」
「かくして置いたよ。佐伯が動くのはわかっているのだろう。死神のメールは何処か脅しているように見えるな。」
潤紀は片手に缶コーヒーをもっていた。次いでの休憩だとしているのだろう。ベンチに腰をゆっくり下ろした。
「佐伯が表に出ることを決めたという噂らしい。秘書の名取もいまだ納得していないらしい。それはただの傲慢の付き合いと思っているけど。」
「佐伯が出てくればすべて解決するんだ。過去の過ちについても明かせれている今、出てこないのは不思議だと思わないか。俺の親父やおふくろのためにも解決したいんだ。」
彼らしくない発言を聞けて潤紀はほっとした。本音を自分の手のひらで握り潰しているのではないかと4人で思っていた。
「智穏の両親が必ず報われるようにしないとな。生きているときに大したことされてこなかったのはデータで読み取れたから。警察にもみ消される解決した記憶。誰のためのものなんだよ。」
「潤紀、熱くならなくていいよ。親父はただ家を離れたいがために選んだ職なんだ。俺は最初捨てられたと思った。けど、日記を見て陰謀を明かすことを託されたと思った。最後の子供なんだよ。能力を持つ。」
智穏が静かに缶コーヒーのプルトップをカチッと開けた。甘い味と苦い味が複雑に入り混じった味がした。
「能力をもって苦労したんだろう。」
「まぁ、小さな事件の犯人がわかってしまう。正義感で先生に告げ口すると虐められる。正しいことをしたのに間違ったことをしたように扱われる。それに親がいないというのも標的なったんだよ。馬鹿げているよな。高校の時、死にかけたとき誰も助けてくれなかったら死んでた。傷がひどかったらしい。本当に感謝してるけど言えないんだよ。いじめを受けてから自分が狂った奴にしか映らないから。」
小さな苦しみから逃れる方法を誰も教えてくれなかった。いじめから守る行動を見てもやめろと思った時期もあった。死ぬことに関してあまり深く考えていなかったから。優斗はどうしてあんな行動をしたのだろうか。




