20話 滅多にない、っていうことはたまにはあるってことなんですね
短めです……。
今、わたしは王都行きの馬車の中で揺られています。
乗合馬車というものらしく、馬車の中は結構広かった。十人乗りの椅子には、わたし達の他に一組のお金持ちそうな夫婦と旅人風の青年が乗っている。
わたしはというと、その隅っこで三角座りをしたまま硬直中です。
「そんなに硬くならなくても大丈夫よ」
鈴さんが笑いながら声をかけてきた。
確かに、周りの人達のゆったりした雰囲気を見る限り、緊張なんてしなくても良さそうではある。でも、わたし、勇者御一行に囲まれているんですよ! しかも初めて見る生き物の引く初めて見る乗り物に乗っているんですよ!!
この状況で、落ち着けるわけないですから!!
「大丈夫だか?」
かちんこちんに固まっているわたしを、ルークさんが心配そうな顔で覗き込んでくる。肩の上のクーファも「大丈夫カ?」と、ルークさんと同じような目でこちらを見てきた。
「だ、大丈夫です」
「そうは見えないけどね」
クスクス笑いながら、鈴さんが言う。
「そんなに心配しなくても、事故なんてそうそう起きないわよ。盗賊だって、この辺はあまり出ないし」
じ、事故? 盗賊!?
さらりと告げられた不穏な言葉。余計に心配が増えたんですが!!
顔色を変えたわたしを見て、ルークさんが眉をしかめた。
「鈴さ。そったらこと言われたら、ますますおっかなくなるだよ」
むう、と口を曲げているのは、諌める為なの、かな? 全然迫力がないというか、むしろなんだ癒される表情です、ルークさん。
鈴さんは苦笑いをしながら「ごめんごめん」と謝った。
「ジュジュ、怖がらなくても大丈夫だべ。事故なんてそうそう起こる事でねぇ」
わたしを患者として見てくれているのか、ルークさんは非常に親切にしてくれている。優しい笑顔を浮かべながら、わたしに励ましの言葉をかけてくれた。
「こういう大きい通りじゃ、鈴さの言う通り、盗賊だって滅多に出ては――……」
ルークさんの言葉が言い終わる前に、ヒヒィ! という動物の大きな鳴き声と共にガックンと馬車が揺れた。後頭部を思い切り壁にぶつけてしまう。
「いっ〰〰……」
頭を押さえるわたしの耳に、外から悲鳴の様な声が聞こえてきた。
「と、盗賊だ!」
……嘘でしょ!?




