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白の魔王の物語  作者: まる
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15話 笑顔が怖いものだと初めて知りました

投稿が遅くなってすみませんでした。

 厨房にハイルさん達が入っていくと、おかみさんが「さてと」と声をあげた。


「はい、これをつけて」


 え?

 きょとんとするわたしに、おかみさんが白い布を渡してくる。これは、エプロン?


「もうすぐお客が来るからね。とりあえず、今日は注文を聞いて厨房に伝えるだけでいいよ。まだ怪我も完治してないしね」


 エプロンをつけながら口早に説明を終えて、厨房に入って行ってしまう。

 え、ええ―――!? どうしろっていうんですか!!


 戸惑っていると、カランとドアベルが鳴った。どやどやと、数人の男の人が入ってくる。

 お、お客さんですか? ですよね!

 慌ててエプロンをつけて、「いらっしゃいませ!」と声をかける。その声に反応して、一斉に視線が集中した。


「ん? あれ? 何、この子」

「え、おばちゃんは?」

「何、何でこんなとこに女の子がいるわけ?」

「エプロンつけてるってことは、ここで働いてんの? 嘘、いつから?」

「っていうか、初めて見る子だけど。どこの子? この辺に住んでたっけ?」


 え、ちょ。

 なんでそんなに喰いついてくるんですか! 食事に来たんじゃないんですか!?

 というか、みなさんなんでそんなにガタイがいいの! 怖い!! 離れて!!


 なんて、言えるわけもなく。

 じりじりと後退していると、「ちょいと!」と大きな声が割って入ってきた。

 振り向くと、仁王立ちしているおかみさんの姿が。

 ああー! 助かった……!!


「あんたら、仮にも騎士団だろ!? うちの看板娘を怖がらせるんじゃないよ! 食事に来たんなら、さっさと席に着きな!」


 おかみさんの叱責に追いやられるようにして、男の人達は「なんだよ」と不服そうにしながらも席についた。

 ほっと安堵の息を吐いたわたしに、おかみさんが苦笑いを浮かべる。


「悪かったね、こいつらが来るの忘れてたよ。いきなり囲まれて怖かっただろ。一応この辺を取り締まる騎士団の一員だから安心しな」

「騎士団の方達だったんですね」


 騎士団は、確か国に仕える人達で、いろんな町に配置されているんだっけ。

 魔物退治もするから、共同で戦ったって話を雷翔から聞いた覚えがある。なるほど、だからこんなにガタイの良い人ばかりだったんですね……。


 納得していると、おかみさんが急にわたしの肩を叩いた。


「あんた達、この子は少しの間ここで働くことになったジュジュだよ。見ての通り大人しい子だから、怖がらせるんじゃないよ! 変な事したら出入り禁止にするからね!!」


 おかみさんの紹介が終わった途端、ピューっと口笛が鳴った。続いて歓声が上がる。


「ジュジュちゃん、歓迎するよ!!」

「可愛いね、こっち向いて!」

「今、恋人いる? 俺、彼女募集中なんだけど!」


 うわー! 何々!? よく分かんないけど、何か凄い盛り上がってる!!

 思わずおかみさんの後ろに隠れると、なぜか一層歓声が上がった。何で!?

 そんなわたしと彼らの様子を見て、おかみさんがため息をつく。


「あんた達。この子が誰か分かってんのかい? 例の被害者だよ」


 おかみさんの一言に、ぴたっと歓声が止んだ。


「え? 被害者って、赤髑髏の?」

「もしかして、あの、禁忌の森で見つかったっていう?」


 騎士団の人達の言葉に、おかみさんは神妙な顔でうなずいた。

 さっきまでの明るい雰囲気から一転、静まり返った店内に、ガランガランと激しくドアベルが鳴った。


「勇者様?」

「ジュジュ!」


 飛び込んできたウィナードさんは、慌てた様子で駆け寄ってきた。


「ルークに聞いた。店で手伝いをするんだって?」

「え? はい」


 真剣な顔で尋ねてきたウィナードさんに頷くと、なぜかはぁ~とため息をつかれた。

 え? なんですか??


「どうかしたんですか? あの、わたし、何かしました?」

「……いや、いいんだ。ジュジュ、ここの手伝いをするんだね?」

「? はい」


 さっきも同じ事聞かれましたけど。

 同じように頷くと、ウィナードさんは額に手を当てて少し黙りこんだ。それから、顔を上げてわたしを見る。なな、なんでしょう。何か落ち着かない……!


「無理はしない」


 はい?


「知らない人に絡まれたらすぐに助けを求める。町に出る時には俺が着いていく。これが条件だ」

「え、でも……勇者様も忙しいでしょうし、お手を煩わせるわけには」

「君の護衛も、仕事の一環だから」

「あの、勇者様」

「その呼び方、禁止。今まで通りでいいから」


 にっこり。

 ウィナードさんの笑顔につられるように、わたしも引きつった笑顔を浮かべた。これ、笑顔と言う名のごり押しですよね! 笑顔ってこんなに怖いものなんですか!?


 硬直しているわたしの横では、おかみさんが騎士団の人達に声を張り上げていた。


「見ての通り、ジュジュはウィナードの保護下にいる子だからね! 手を出すんじゃないよ!!」


 おかみさん! そっちよりもこっちを何とかして下さい!!


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