表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の魔王の物語  作者: まる
12/61

11話 クーファの恩返し

少し短め。

これから本編に入っていきます。…たぶん。

 ああーどうしよう!


 さっきからそれしか考えてない。でもでも本当にどうしよう!


 まさか、いきなり勇者と遭遇するとは予想外の展開だ。予想外過ぎてどうしていいのやら! というか、わたし魔王候補のくせして勇者に助けられたんだよね? ないない! あり得なさすぎだって!! こんな事が白亜様にバレでもしたら、あの絶対零度の視線で見下ろされて、それ以降はああ考えたくもない!!

 ルークさんに安静にするように言われているけど、正直ベッドの上をゴロゴロと転がりまわりたい気分だ。だってだって、数日後にはその勇者と一緒に出かけるんでしょ? 危険極まりなさすぎだってばー!


「ジュージュ!」


 バンッと扉が開いて、緑色の物体が飛んできた。デジャヴ? と思う間もなく、ドラゴンはお腹の上に着地を決め、


「ギュッ!」

「ぐえっ」


 な、なんで着地に失敗するの……! お腹の上で転んだクーファの顎が思いきりみぞおちに入った。さっき食べたミルク粥っていう料理が喉元まで戻ってきたよ……!!


「ジュージュ、平気カ!?」

「は、はは……へいき……」


 慌てて聞いてくるクーファに笑顔を浮かべるけど、たぶん顔は引きつってる。脂汗も浮かんでるかも。クーファは気まずそうな顔をしながら、わたしの胸辺りまでやってくるとぺたりと座りこんだ。丁度顔を突き合わせる位置だ。


「どうしたの? ウィナードさん達と一緒に行ったんじゃなかったの?」


 赤髑髏の事件の経過報告があるとかで、ウィナードさん達は宿を出ていった。クーファも一緒にくっついて行ったはずだけど……。

 その質問には答えず、しょんぼりした様子でクーファがつぶやいた。


「ジュージュ。ゴメンナ」

「大丈夫。お腹に怪我はしてないから、ちょっとくらいぶつかったりしても平気だよ」


 わたしの怪我は肩と腕と足、それと筋肉痛だけだ。それもルークさんの薬のおかげでだいぶ楽になっている。

 クーファは静かに首を振った。


「ソウジャナイ。オレ、頼ミ、叶エラレナカッタ」


 え? 頼み? 何だっけ。


「恩返シ、出来ナカッタ。ゴメンナ」

「え? してもらったじゃない。クーファがウィナードさん達を呼んできてくれなかったら、死んじゃってたもん。しかも王都まで送ってくれるっていうし、こっちのほうが恩返ししなくちゃいけないくらいだよ」


 笑いながら言うわたしに、そうじゃないとまた首を振る。小さな耳がたれ、背中のタテガミも心なしか萎びているみたいだ。


「ライカ」


「――……!」


 クーファの口から零れたのは、わたしの親友の名前だった。


 どうして。

 どうしてクーファが雷翔の名前を知っているの?


「……それ……その名前」


 声が震える。心臓がバクバク脈打っているのが耳まで響く気がした。

 クーファは相変わらずしょぼんと俯き加減だ。


「ジュージュ。アノ時、頼ンダ。ライカノ無事、知リタイッテ。怪我シテタラ、治シテアゲタイッテ」


 そう。あの時、確かにそう思った。でも意識が薄れてて、曖昧で。わたし、クーファにそんな事を頼んだんだ……。


「オレ、ウィー達呼ンデカラ、山行ッタ」


 ドキドキする。


 雷翔は。雷翔はどうなっていたの?


「ズット探シタケド、誰モイナカッタ」

「誰も……? ……死体も、なかったの?」


 クーファがうなずく。


 ……ああ!


「死ンデル魔物ハイタ、ソレ以外ハ、何モ」

「クーファ!」


 胸の上のドラゴンを抱きしめる。目の端から涙が零れていくのが分かった。

 確証はない。だけど、生きているかもしれない。ううん、きっと生きてる。あの雷翔がそう簡単に死ぬわけない。分かっていたことじゃない。


 急に抱きしめられてびっくりしたのか、クーファは丸い目をますます丸くしてわたしを見上げた。


「ジュージュ、ドウシタ。泣イテルカ? オ腹、痛カッタカ? ゴメンナ!」

「ううん、違うの。ありがと。ありがと、クーファ」


 おろおろするドラゴンに、わたしはしばらくありがとうを言い続けていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ