らじお
はじめてらじおをかあちゃんからもらった。
「このらじおはね。ほとんどこわれていてひとつしかきけないの」
かあちゃんはいった。
ぼくはらじおがとてもほしかったので、さっそくきいてみた。
らじおをしゃべるひと(らじおぱーそなりてぃーというらしい)はおんなのひとで、とてもてんしょんがたかいあげあげのこえをしていた。
ぼくはこころがわくわくした。
これがらじおかー。
ぼくはしょうがく2ねんせいだ。いえはとてもびんぼうでてれびなんかはおいていない。ほんだっていつもとしょかんでかりてくるんだ。ほんとうはしんぴんのほんをかってさっかさんのいんぜいにこうけんしたいけれど、おかねがないんだからしかたがない。
おこづかいはつきに80えんだ。
ぼくはつきの80えんのこづかいで、がりがりくんそーだあじをかうのがぼくのゆいいつのたのしみだ。
わーい。そういえばきょうはぼくのこづかいのひだった。
きょうはにちようびなので、がっこうはない。
ぼくはちかくのすーぱーでがりがりくんそーだあじをかった。
ぼくはいえのちかくのこうえんへむかった。
こうえんでがりがりくんそーだあじをたべながら、らじおをきこう。ぼくはそうおもったからだ。
こうえんにとうちゃくすると、こうえんにはぼくのくらすめいとのたまさぶろうくんがいた。
「おーい、たまさぶろうくーん。ぼくだよ。らいちゅうだよー」
そう、ぼくのなまえはらいちゅうというんだ。ぼくがみんなにじぶんのなまえをいうと、みなおどろいたかおをするんだよね。きらきらねーむだっていいながら。でもきらきらねーむっていったいなんだろう。きらきらするほどかがやいているすばらしいなまえのことなのかな? だとしたらうれしいや。かあちゃんどうもありがとう。
ぼくはたまさぶろうくんとごうりゅうすると、しろいべんちにいっしょにこしかけた。
「ほら、これがぼくのらじおだよ。すごいだろう。ちゅうこですこしこわれていて、ひとつしかきけないけれど、でもぼくにとってはだいじなたからものさ」
たまさぶろうくんはぼくのらじおをみるとふしぎそうなかおをした。
「どうしたの?」
「ねえ、これほんとうにらじおなの?」
「ほんとうだよ。おとだってちゃんとでるんだから。ほらきいてみなよ」
ぼくはたまさぶろうくんのみみにいやほんをさしてらじおをながした」
『へい、へい、ちぇけらっちょ。きょうもげんきにやっているかい? らじおのまえのらいちゅう』
たまさぶろうくんはらじおのいやほんをゆっくりとはずした。
「ねえ、これなんかおかしくない? らじおぱーそなりてぃーがやけにてんしょんたかすぎだよね」
「え? そんなことないよ。らじおはどれもてんしょんがたかいってかあちゃんがいっていたよ」
「そうなの? でもまだふしぎなことがあるよ」
「なあに? たまさぶろうくん」
「うん。なんでこのらじおぱーそなりてぃーはきみのらいちゅうっていうなまえをしっているんだろう?」
「え? そういえばなんでだろう? でもらじおっていうのはそういうものじゃないの?」
「そうなのかな。でもそれだとこのらじおはらいちゅうくんにむけてしかじょうほうをはっしんしていないことになるよ。ぜんこくにはらじおをきいているひとはすうまんにんいるはずなのに」
「そうだなあ。なんでだろう。いつもこのらじおぱーそなりてぃーはぼくのなまえをよぶんだよなぁ」
「ねえねえ。きになったことがあるんだけど」
「なあに? たまさぶろうくん」
「このらじおのぱーそなりてぃーのこえなんだけどさぁ」
「うん」
「このこえ、どこかできいたことがあるとおもったら、らいちゅうくんのかあちゃんのこえにそっくりなんだよ」
「え? うそ?」
「ううん。ほんとうだよ。いっかいだけなつやすみにらいちゅうくんのおうちにぼくいったことあるでしょ」
「うんうん。あのかるぴすのげんえきをごちそうしたときだよね」
「そうそう。げんえきかるぴすをのんでいるとき、『げ、げんえきのかるぴすをうすめないでのんでいるなんて』ってどくとくのはつおんで、いったときのこえとこんかいのらじおのこえがいっしょにきこえるんだよね」
ぼくはそういわれて、かあちゃんのこえをおもいだしてみた。
けっか、いっちした。
「な、なんでかあちゃんがらじおのぱーそなりてぃーなんかをやっているんだ?」
ぼくはつきにいちどのたのしみであるがりがりくんそーだあじをあじわいもせずにいっきにたべると、たまさぶろうくんにてをふり、いそいでいえへとかえった。
いえではかあちゃんが、ないしょくをしていた。
「ねえ、かあちゃん」
「なあに、らいちゅう」
かあちゃんはまりあさまみたいにわらった。
「ねえ、このらじおなんだけどさ」
「ギクッ!!」
かあちゃんはとつぜんぎくっていうこえをだした。
かおにはたくさんのあせがうきでている。
ぼくははなしのつづきをした。
「このらじおぱーそなりてぃーがさ、かあちゃんのこえとそっくりなんだよね」
するとかあちゃんはかなしそうなかおをした。
「ごめんね。でもばれたならしかたがないね。じつはそれはらじおではなくてろくおんきなんだよ。それをまいにちらいちゅうがねたあとにわたしのこえをふきこんでらじおふうにしているんだよ」
「なんでそんなことをしたの? かあちゃん」
ぼくはうらぎられたおもいというよりはじゅんすいにふしぎだったので、きいた。
「なんていうか、わたしがらいちゅうのさんたさんみたいになったきになれるからだよ。わたしがらいちゅうのさんたさんになって、いつもらいちゅうにことばのぷれぜんとをおくりたい。そうおもったからなんだよ」
「かあちゃん」
ぼくはそれをきいてほんとうにうれしいきぶんになった。
「ごめんね。もうそんなことはやめるから。こんどほんとうのらじおをらいちゅうにかってあげるから」
「いらない! ぼくにはかあちゃんらじおがあるじゃないか」
「ら、らいちゅう」
「ねえ。このらじおをさあ、てれびきょくのひとにきかせてみようよ」
「な? なにをばかなことをいっているんだい? らいちゅう」
「もしかしたらさ、これをきいたえらいひとが、かあちゃんをおもいしろいひととおもってくれて、かあちゃんをたれんとにしてくれるかもしれないじゃないか」
「いやだよ。わたしがたれんとなんて。わたしはらいちゅうのさんたであればそれでいいんだよ」
「でも、ぼくはかあちゃんがもっとゆうめいになってくれたほうがうれしいな。ぜんこくのみんなにかあちゃんのすばらしさをしってもらいたいんだ。それにゆうめいになったら、おかねがいっぱいもらえて、このびんぼうせいかつからぬけだせるかもしれないじゃないか」
「ら、らいちゅう」
「ぼくいってくるね」
てれびきょくはここからそんなにはとおくない。
ぼくはらじおをてにし、じてんしゃにまたがるとてれびきょくへといそいでむかった。
そのごのこと? もちろんかあちゃんはゆうめいなたれんとになり、いまはばんぐみのしかいもしている。
とうぜんおかねもむかしよりたくさんもらえて、ぼくはまえよりもすこしいいいえにすむことができるようになった。
かあちゃんどうもありがとう。