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長篠に立つ三人の武将

作者: 山中 孤独

初めまして。

ちょっとした歴史小説を友人に勧められて書かされました。

かなり硬めに作ってあるフィクション歴史短編小説です。

暇潰しにでも読んで下さると恐縮です。


時は戦国、連吾川に立てられた柵を前に佇む二人の武士がいた。

武士達は柵越しに川や向こう岸に倒れる戦国最強を唄った武田の猛者達の屍が長篠の戦場に転がっているのを呆然と見ていた。


「戦国最強・武田の騎馬がこうもあっさりと破れ去るとは、連射ができないとはいえ鉄砲はやはり馬鹿にできんな~」


お調子者の口振りで長篠の殺戮で得られた結果を淡々と語る。

彼は、織田家の猿・筑前守 羽柴藤吉郎秀吉。 地侍の出でありながら上り詰めた戦国世頭。信長の死後は天下を統一するという偉業を成し遂げた男だが、猿にしか見えない。


「鉄砲衆である私ですら、こんな数を撃たせたことはありません。 あんな轟音を聞くのも初めてです」


発砲した数と鉄砲の音への驚きを落ち着いた口調で話す。

彼は、織田四天王の一人・惟任日向守 明智十兵衛光秀。 齊藤家家臣だったが後に諸大名を経て、足利義昭に従属し織田家に仕える。すぐに、才覚を発揮し織田家有力家老に成り上がる。後に丹波を平定する等、多くの功績を残すも本能寺の変で主君である信長を討った。


「まったく、信長様は凄いお方だ。わしらには川を堀に利用して簡単な城を造っちまうなんて想像もつかなんだ」

「あの方は本当に凄いと思います。ですが、私にはあの方の戦があまりにも惨い気がしてなりません。もっと他に道があったのでは……」

「他の道があったなら光秀殿が自分で進めばよかったのでは?」


秀吉は悪戯の笑みを浮かべながら聞いた。穏便に言ってはいるが直訳すれば、謀反を起こせばよいのでは、と言っているのである。


「まさか、私にはあの方と違って己の道を迷わず進むなどできませんから。(今はですけれども……)」


光秀は雨の後の高く見える青い空を見て言った。


「光秀殿、如何した?」

「いえ、あの方は己が道を進めるが故に我等が主たりえるのでしょう」

「光秀殿の言うとおりじや。それが信長様の凄いところで短所でもあるんじゃが……」

「短所とはどういうことですか、秀吉殿?」

「己が道を進むがゆえに周りがついて行けんのじゃ、浅井長政殿も、信勝様も、お母上も……。」


秀吉は土田御前の話を出したところで口をつぐんだ。

土田御前は信長の実母であるが、信長の幼少期のうつけ姿を見て失望し、家督を弟の信勝に継がせようとしたが、母親にそそのかされた信勝は信長に謀反を起こして、そのまま信長の計略によって死亡した。それ以来、土田御前との仲は冷えきっているが、まったく気にしていないように見せているが近親に拒絶、ましてや実母に拒絶されたとなるとその悲しみは計り知れない。それだけでなく、弟を自分の手で殺害したのは信長を長きに渡り苦しめただろう。

信長は鬼となり、魔王となり、天下人になろうとも、その悲しみは消えないだろう。


「口がすべり申した。この話は無かったことに……」

「武田の猛者も、南蛮の技術の前には手も足も出ぬか……」


秀吉が、話を揉み消そうとした瞬間、後ろに新たな武将が現れて呟いた。

馬上から伝わるその威圧はまさしく魔王だ。紛れもない、織田上総介信長である。


「の、信長様!如何されましたか?何故ゆえこのような場所に居られるのですか?」


秀吉はいきなり信長が現れたことに驚いて質問を重ねた。


「なぜそう焦る?ただ、武田の屍を見物しに来ただけだ。うぬらこそ、何をしている」

「私は鉄砲の威力を目に焼きつけておりまする」


秀吉より先に光秀が答えた。


「鉄砲衆であるうぬが、か? 面白い。日頃から撃っておると聞いておるが?」

「かような程の数の鉄砲が火を吹くなど滅多にございませんが故に 、鉄砲でこれ程の死人が出ることなどありませぬ。鉄砲衆ながら、改めて鉄砲の恐ろしさを噛み締めておりまする。」


「……光秀は気がつかなかったか」

「な、何をで御座いますか?」


光秀は信長の奇想天外な発言に驚きながら、これ以上失望させまい、主君を失望させ切腹するまいと慌てて聞き返した。


「武田が屈したのは鉄砲ではない。武田を破ったのは南蛮渡来の知恵である。」

「は、はぁ。私にはその知恵が分かりかねまする」


光秀は本当にわかってない様子である。


「先の戦、鉄砲だけを並べても勝てなかった。鉄砲は連射ができぬ、故に次発までの間を利用すれば、武田が勝った。しかし、武田は負けた。光秀、何故ゆえ武田は負けた?」

「柵と川が邪魔をしたから、でしょうか?」


この戦いは鉄砲を使って手に入れた勝利だと思っていた光秀は、自信なさ気に答えた。それ以外の理由を答えろなど言われるなど思いもよらなかったのだ。


「武田の馬は馬防柵の前に阻まれ怖じ気づいたのだ。武田の猛者は 堀を前に屈したのだ。この柵と堀はこの信長が策ではない。この策は伴天連に教わったのだ。先の戦は伴天連の土産話をそのまま利用したにすぎない。」

「「・・・。」」


光秀はただ、黙ることしかできなかった。驚愕のあまり頭が回らなかったのだ。

秀吉も光秀の隣で話を聞いていたが光秀と同じく驚愕の表情を見せるだけだっだ。


「この信長は日の本を一つの国にまとめる。ここに天下に武を布くことを改めて宣言する!」


信長ははっきりとした口調で断言した。

秀吉は信長の言いたいことが発言と結びつく納得した表情を浮かべ、今度は自粛するように黙った。

光秀は依然として納得がいかないようであった。


「何故、この信長は天下布武を宣言したか?それは、羅馬の国に負けぬ国を創るため、日の本を清に負けぬと劣らぬ一つの国にするため。懸命に生きし日の本の民に安寧の世が訪れるための礎になるはうぬら、この信長が家臣であるぞ。」


光秀はようやく信長の真意を理解した。

信長は決して魔王ではない、魔王を装う覇王なのだ。弟を殺してでも、母に拒絶されようとも、多くの民の安寧の世のために邪魔者を排除し、日の本を統べようとしているのだ。それが、民の安息のため、弟の信勝への償いため、母の土田御前への謝罪のため、と思っているのだ。

光秀は意を悟ると信長を見つめて言った 。


「私は信長様が創る世の礎になる覚悟は岐阜に来たときよりできております。」


秀吉も光秀に続いて決意を露にした。

ここで遅れるをとるのは今後の出世に関わりかねないと思ったのだ。


「信長様、某も居りまする。農民である某をお取り立て頂いたあの日より、この命は信長様のために使う覚悟はできております。 しかし、日の本を一つの国にまとめるにはまだ必要なことが御座います。早々に岐阜に戻りましょう」


信長は二人の顔を見ると表情を変えず、しかしその表情はどこか嬉しそうに言った。


「この信長に続け!」


信長は馬腹を蹴って本陣へと去った。

信長の言葉はとても短いがとても深かった。信長の言葉の意味は二人に対する願いだったのだ。簡単に表すならばこうだ。


「この信長を疑うことなく、ただ民が求める安寧の世を手にいれるための戦いを手伝ってくれ。

帰るぞ、凱旋の準備をしてこの信長の後についてこい。」


残された織田家重臣二人は一瞬見つめあうとそれぞれの陣に戻るために長篠の戦場に背を向けた。二人の出自は違えど今は思いを共有しあっていた。


「信長は決して魔王ではない、魔王を装う民思いの、そしては家族思いの覇王なのだ。

ただ、死んでいった者のため、これから生まれる者のため、安寧の世を創ろうとしているのだ。

それが、死んだ者への償いであり、生まれる者への責任であると信じて疑わずに。」


二人は陣に戻りながら改めて信長という覇王を尊敬し直したのだった。


読んで下さった方、ありがとうございます。


この作品、コンパクトにまとめると

・三段撃ち?鉄砲三千丁?鳶ヶ巣山砦攻防戦?そんなの知らねぇよ!

・大事なのは織田軍が野戦築城を使ったって事実だよ!

・信長って実はマザコン?


はい、これだけです。

素人が勝手なこと言ってすいません。


ストーリーはてきとーです。

はい、すいません。

あくまで暇潰しなのでご容赦願います。


今回はこの辺で失礼させていただきます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] こうした歴史の一場面を描くSSは好物です。信長に心服している光秀の内面の動きを読んでみたいと思います。 [気になる点] 段落を開ける、「「・・・。」」⇒「……」などの基本的な文章のルールを…
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