こんなところに異世界人
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「オー、なかなかヒロいですネ!」
二階ほどフロアを昇り、少女と共に入った部屋は彼女の言う通り中々に広く、シャワー室が付いているなど、格安な割に設備は充実していた。
ちなみにあの後少女とは部屋代を割り勘で払うことで和解。
そして今に至る。
「そうイえば、まだジコショウカイしてなかったですネ。ワタシ、『ミーニャ・ヴァルシャート』。『ミーニャ』ってヨんでほしいデス」
「俺はミライ・ニノミヤだ」
「あレ? さっきはイチニンショウが『ワタシ』じゃなかったですカ?」
あ、ドジった。
同じ身体なのを忘れて、つい地の一人称を使ってしまった。ただでさえそれぞれの性別を象徴するかのような「俺」と「私」なのに。
取り合えず誤魔化そう。
「えっと……。俺、二重人格なんだよ。さっきミーニャと張り合ってたのは女の子らしい人格で、今は男らしいこの人格。地の性格は女の子らしい方なんだけど」
「おー、ナルホド。だいたいワかりました!」
よかった、信じて貰えた。
といっても一つの身体に2つの魂なので、二重人格に近いのは確かである。
「ところデ、『ニノミヤ』っていうミョウジでヒっかかったんですケド……。ミライはニンゲンカイからキました?」
がたん!
ミーニャのその質問を聞いて、俺はその場でずっこけかけた。
こいつ、「ニノミヤ」が人間界の名字だと知っている。
「……だったらどうする?」
「それならそれデ、ナカマにアえてうれしいデス! ワタシも、ニンゲンカイのアメリカはオハイオシュッシンなのデース!」
何? 今目の前にいる金髪猫耳萌え少女がアメリカ出身だと!?
まさかこいつの尻尾と耳、コスプレだとでもいうのか。
「なら、聞きたいことが一つある。お前は転生前はコスプレイヤーかなんかだったのか?」
「なんデそんなことキくんですカ?」
「アメリカのオハイオ州出身の獣人なんて聞いたことないぞ」
「あー、これはイロイロとジジョウがありましテ……」
ミーニャはそこから、自分が転生した経緯と何故この姿になっているのかという理由を話始めたが、あまりに長いので割愛すると──
1.人間界でいう十年前(つまり俺達が死ぬ十年前)にアメリカのオハイオ州に住んでいたが、不慮の事故で死んでしまった。
2.気付いたら一面真っ白の空間にいて、ガリアルドに転生を薦められた。
3.せっかくなので転生先での種族を変えられないかと頼んだら、出来るとの事だったので猫人に転生した。
との事だった。
「こっちにキてサイショのころはタイヘンでした。『ラグナノヴァ』のヒト、Englishがツウじないから、カタコトのニホンゴでCommunicationするのクロウしましタ」
「あ、この世界『ラグナノヴァ』っていうんだ」
「ガリアルドにガイドマップもらわなかったんですカ?」
「ガイドマップ?」
『お兄ちゃん。ほら、あの本』
『ああ、あれか』
確かに、色々荷物を渡された時にそんな本も貰った気が微レ存。
リュックサックに入れっぱなしなので、寝る前にでも読んでおこう。
「あのガイドマップ、けっこうフカイイ? なのデ、ミておいたほうがいいですヨ!」
「ありがとうミーニャ。寝る前にでも読んどくよ。あ、シャワー先に使わせて貰うぞ」
ドウゾドウゾと言うようにミーニャが会釈したので、部屋にあった部屋着(何故か浴衣)を持って俺はシャワー室に入った。
今回のタイトルを見て分かる人もいると思いますが、意外とネタを作中にぶちこんでおります(今回はぶちこんでません)。
探して見るのも一興かと、申し上げます!
(←ここネタ)