関所にて
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謎の女の人(女の子?)との戦いから十数分。私達はようやく町の入り口にたどり着いた。
それにしてもこの町の周り、物凄い壁。
一瞬行き止まりかと思ったけど、近くに立ってた看板のおかげで壁って気付けたんだよね。
壁で町を囲んでるって、何かの漫画でもあった気が。あっちは巨人から町を守るために壁があったから、こっちは対モンスター用なのかな?
頭の中でそんなことを考えながら、私は門を潜り抜けようとする。
「おい、そこの嬢ちゃん。ちょっと待て」
案の定兵士さんに呼び止められました。
「あの……私、何か悪い事でも?」
「『悪い事でも?』ってね……。ちゃんと身分証を見せて貰わないと。そうじゃないとここは通せないんだよ」
あ、ご親切にありがとうございます。
でも私、身分証持ってない……。
お兄ちゃんが持ってるわけないし……。
よし。ここは包み隠さず正直に言おう。正直に言えば何とかなるよね!
「すいません……。身分証持ってないんです」
「ああ、身分証持ってなかったのか。じゃあ、ここに名前を」
そう言って兵士さんが取り出したのは、元の世界でも売っていそうなノート。しかも罫線には5mm感覚のドットが打ってあるときた。
しかも驚く事に、先客と思われる名前は全て日本語で書かれていた。
流石に漢字じゃないけど、間違いなく日本古来から伝わるカナ表記。ちゃんと読める。
日本語万歳!
『お兄ちゃん、名前どうする?』
『別にどっちを使ってもいいよ。なんなら偽名使うか?』
『いや、流石に無いけどさ……。じゃあ異世界っぽいからお兄ちゃんの名前使うね』
『へーい』
お兄ちゃんの返事を確認すると、兵士さんからペンを受け取って「ミライ ニノミヤ」とノートに書いた。
「ニノミヤ……? あまり聞かない姓だな」
「ええ。知り合いにもよく言われるんです」
「ふむ……。じゃあ、次にこちらに必要事項を」
兵士さんにノートを返すと、今度は別のノートが渡された。開いてみると、出身地や年齢、性別、町にきた目的、その他色々な欄が。
取り合えず全部埋めよう。えっと、年齢は18、性別女、出身地は……アニメのタイトルの略称でも入れとこ。
で、困ったのが「町にきた目的」の欄。
『お兄ちゃん、どうする?』
『どうするって言われてもなぁ……。こういう異世界トリップって大概ギルド入るから、それにしとけば?』
『合点承知』
他の項目もお兄ちゃんとの相談の上で埋めて、兵士さんにノートを渡す。
「えっと、出身地……ノゲノラ? 聞いたことが無い地名だな」
「ええ、ものっそいド田舎なんです」
「ふむ……。他の欄も問題は無いな。なら最後に通行料210円を払ってくれ」
こりゃまたどっこいおったまげ! 通貨単位も日本の円か! 日本の円が異世界を制した!
いや、そんなこと考えてないでお金払わなきゃ。
リュックサックに手を突っ込んで、ガリアルドから貰った財布を取り出す。
中身を確認すると、違う種類の紙幣が三種類十枚ずつと金銀銅の硬貨が十枚ずつ。紙幣は多分、諭吉と樋口と野口で、硬貨は金が五百円、銀が百円、銅が──。
『十円!』
『お兄ちゃんは黙ってて』
五円と一円が無いのに違和感があるけど、無視して銀硬貨二枚と銅硬貨一枚を兵士さんに渡した。
「……よし、丁度210円だな。もう町に入ってもいいぞ」
そう言って兵士さんが道を開けてくれたので、私は堂々と異世界で初めての町に踏み出した。
次はとうとう町です!
新キャラも出す予定なので、乞うご期待!