夕暮れ近くまで迷いかけ
──数時間後。
「ちょっと待て…………この森……。どんだけ広いんだよ……」
未来は森を抜けるために孤軍奮闘していたが、全く抜けられる気がしない。
感覚的には10キロは歩いただろうか。それだけ歩いても抜け出せないということは、相当に広い森らしい。
更に悪いことに、日も暮れ始めてきた。
早いところ森を抜けないと、今夜は野宿になってしまう。
せめて異世界生活一日目はベッドの上で寝たい。
『ねぇねぇ、お兄ちゃん』
「なんだよ美羽……。こんなに疲れているお兄ちゃんにまだ歩けという無理難題を課する気か?」
『違う違う。高い木の上からだったら町の場所が分かるんじゃないかな?』
「あー、それ俺も考えたけど木登り出来ないんだよな俺」
木登りなんて小学生の時に学校に生えていたクスノキに登って先生に怒られて以降やったことはない。
昔の感覚を思い出せば出来るかもしれないが、その感覚が衰えていたら転落等の大惨事になりかねない。
『なら私に代わって。私、木登り出来るから』
「へぇ、お前木登り出来たんだな。じゃあ頼む』
『りょうかーい」
よし。じゃあ登りやすそうで背の高い木を探そうかな。
そう思って辺りを見回すと、数メートル先に大きな木を発見!
二ノ宮美羽、これより広葉樹登頂作戦を開始する!
『頼むから落ちるなよー』
「平気平気。私、木登りやってて一回も落ちたことないもん」
『今回もそうだといいんだがな……』
お兄ちゃんの心配を他所に、私は難なく天辺までたどり着いた。
コンパスを持ちながら遠くを眺めると、数キロくらい先に町を発見!
『おー! 町だ町だ!』
「よかったぁ、近くに町があって……」
コンパスで方角を確認すると、北西の方向。日が暮れるまでには到着出来るかな?
方向も分かった所で、私は木を滑り降りて地面に着地した。
「よーし。それじゃあ早速、しゅっぱーつ!」
「ちょっと待ちなさい」
私が歩き出そうとした瞬間、そんな声と共に1つの影が目の前に躍り出た。
木漏れ日で見えたそれは、女の人だった。
年齢は私と同じ18歳くらい。緑色の髪を短めのサイドテールで結ってる美人さん。
ただ、露出面積多すぎ……。
上半身はビキニアーマーにマント、下半身は超が付くほどのミニスカ。
世の男たちが見たら欲情が押さえられなくなるね、こりゃ。
『ぬぉぉぉぉぉぉぉっ!? なんというスポーティーな体格っ! 素晴らしいまでのボンキュッボンではないかぁっ!!』
それは頭の中のお兄ちゃんにも言えることで。
「一体なんの用事ですか? 私、これから町に行きたいんですけど……」
「あら、そうなの? でもね──」
そう言いながら女の人は腰の後ろに手を回して、するりと引き抜いた。
その手の先が夕暮れの日を浴びて光った。
それは──二降りのカタール。
「私に荷物、奪われちゃってっ!!」
そう宣言した女の人は、地面を蹴ってこちらに突進してきた。
御想像できる通り、次回は戦闘回です。
正直言って、描写を上手く出来るか心配です……。