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第5話:メス犬に太い槍

 僕は西の城門を出てすぐに契約獣を召喚した。


《ポチ召喚》!!



------------------------

【ステータス】

 契約者:マモル・サカタ

 レベル:1 (Next 0/50)

 名前:ポチ(ヴォルフ)

 性別:♂

 状態:健康

 

【スキル】

 なし

------------------------



 狼そのままの姿をしたこのモンスターは、僕が初めてテイムに成功した『ポチ』だ。

 この子は神様が僕のテイムの練習台として呼び出したモンスターで、まだ戦闘の経験がないため経験値は0のままだ。

 昨夜カーライルさんに聞いた話によると、特定のモンスターは経験値を貯めてレベル上げていくと『進化』するらしい。これって結構魅力的なシステムだよね、自分のお気に入りのモンスターを育てて進化させるなんてさ。

 ちなみにテイマーのジョブレベルを上げるにはテイムを成功させて経験値を得ることが必要で、テイムを使用できるのは一日に3回ほどが今の魔力の安全ライン。そしてポチのレベル上にはモンスターと戦わせなくてはいけない。

 これを効率的に行うにはどうするか、先ずポチが索敵を行い敵を発見する、そしてポチが率先して敵と交戦し相手が弱ったところで僕の麻痺効果付与のショートソードで切りつける、麻痺させることに成功したらテイムする。安全ラインである3回のテイムで僕の魔力が減ってきたらポチが相手にとどめを刺し経験値とする。

 モンスターの素材とかは金持ちの僕には必要ないから放置の方向で行く。



 僕が進むこの街道の右側100メートルくらい先には『ユーロン川』があり、街道と川の間には腰の高さほどある草が生い茂っている。

 街の近くでは木々が燃料として伐採されているのか見られなかったのだが、三十分程で街道の左側が鬱蒼(うっそう)とした森林に変わった



「よし、ここまではモンスターに遭遇することがなかったな、ポチ」


「ウォウン!」


「だけどここから先では積極的にモンスターを探してもらうぞ、できるだけ弱そうなのからな」


「ウォン?」


「わからないかな、つまり僕たちは弱いということだよ、特に僕がね。

 だから、ポチには強くなってもらいたいし、もっと仲間も増やしたいんだ」


「……ク~ン」


 自分が頼られていないと感じたのかポチは項垂れ、尻尾も寂しげにゆらゆらとしている。

 すぐに頭をなでなでしてやりたいけど、これは生きるか死ぬかの問題だ。


「甘ったれるんじゃない!ポチが強くならないと僕が死んじゃうんだぞ!ポチが敵よりも早く相手を見つけ、敵よりも早く相手を攻撃すること、それが一番大事なことだ!

 できたら僕のことを守ってくれるとありがたい」


「……」


 そんな風に僕を見るなよ!仕方ないだろ僕はテイマーなんだから。

 本当は魔法を使ったり、剣でもって相手を撫で斬りにするようなこともしてみたいんだけど、神様が僕にこのジョブしかくれなかったんだからさ。


「まあ、いい。とりあえずモンスターを探すんだ、できるだけ弱いモンスターを見つけたらご褒美を上げるぞ」


「ウォン!?」


「フッフッフ、実は今朝ルミーナさんに頼んでベーコンを貰ってきてある。ポチが頑張ったらリュックから出してお前にあげるから、だから頑張ってくれるよな?」


「ウォン~~~!」


 よしよし、やっぱり犬には餌付けだね。

 ポチはビシっと立ち上がり僕を先導して森へと分け入った。




◇◆◇◆◇◆◇◆



 足音が軽減される魔法靴のおかげなのか、静かに森のなかを探索していた僕とポチが最初に発見したのは『豚ウサギ』ことラパンだった。

 正直カーライルさんのことを思うと複雑な思いがあったのだけど、はたと気付くと一瞬で相手に接近したポチがラパンの喉笛を噛みちぎっていた。

 盛大に血を吹き出しながらのたうち回る大型のウサギは、あっという間に息絶えていた。


「……やっちまったものは仕方ないけど、ポチくんや、モンスターを発見した場合は一応僕に知らせてくれるかな?」


「……ウォン」


「まあいいんだけどね」


 観察眼でポチのステータスを確認すると経験値が10増えていた。

 ラパン程度のモンスターではその程度か……。


「ところで、お腹が空いてるならそのラパンをポチが食べてもいいけど?」


「ウォンウォン」 ブンブン


 ポチは首を横に振り「いらない」という意思表示をしてるけど、いまさらながらテイムしたモンスターの食事ってどうなってるんだろうかと、考えてみたりして。

 レバトンに帰ったら調べなきゃな。


「よし、ならこのまま探索を続けるぞ。モンスターを探してくれ」


「ウォン!」




◇◆◇◆◇◆◇◆



 という感じに探索を続け、何度かラパンやポチと同種のヴォルフ(経験値35)を倒しながら森を進んでいると、ポチのレベルが上った。

 まあレベル2では進化もしないし、スキルを覚えたりもなくこれと言った違いもないんだけどね。


 森に入って1時間くらい経過したのかな、ここまで『人間』には会っていない。

 そしていま僕とポチの視線の先には1匹のモンスターがいる。

 犬の顔を持ち二足歩行が出来て、青い眼をして全身が茶色っぽい毛で覆われた身長が100センチくらいのモンスターだ。そいつは竹槍が刺さって倒れているラパンに頭を(うず)めている。


《観察眼》!!



------------------------

【ステータス】

 レベル:4(Next 150/400)

 名前:コボルト

 性別:メス

 状態:健康


【スキル】

 なし

------------------------


 レバトンギルドの褐色赤毛美女のタニアさんが言っていた『コボルト』だ。

 彼女が言うには戦闘能力の低いモンスターだから、そんなに危なくはないということだったけど、ラパンを竹槍で串刺しにしてそれに食らいついている姿を見ると普通に怖い。

 ポチが調子よく弱いモンスターを見つけていくので安心してついて来たのに、グロい場面に遭遇しちゃったもんだ。これが野生の生き物の自然な成体なんだろうけどさ。

 すっごい怖いけどこのコボルトをテイムすれば、僕とポチだけっていう頼りないコンビの攻撃力の底上げになりそうだ。

 

「ポチ、こいつはテイムするからとどめを刺さないように戦うぞ」


「ウォン!」


 ポチの声に気付いたコボルトは血の滴る顔をこちらに向け、ラパンから竹槍を引き抜いた。

 僕は相手の後ろに回り込もうとジリジリと移動し、ポチは相手の前面でグルル~と威嚇を続ける。


「ガウ~~!」


 モンスターと言ってもちゃんと武器を使うようで、竹槍の矛先はポチに向けられている。油断すれば突き刺されてしまうのは間違いない。竹槍という武器は現代から見れば冗談のように聞こえるが、アレに刺されるのは非常にまずい、傷はそれほど深くはならないだろうが治療しづらい形に傷ができる。この世界には治療薬や回復魔法があるみたいだけど、僕はまだ買ってないしポチが持ってるわけもない。なんで買いに行かなかったんだろう明らかに準備不足でした……。


 なんて言う風に後悔しているとコボルトの背後に廻ることに成功した。

 というのも相手はポチにしか注意を向けていないし、神様に貰った足音を軽減してくれる靴を履いている僕には全く気づいていないのだ。もしかして僕の存在なんてもう忘れているのかも。


 ゆっくりと近づきながら剣を振りかぶりコボルトの背中を浅く切り裂いた。


「ガウン!」


 僕としてはこの剣の持つ麻痺効果を期待していたのだけど、さすがにすぐには効果が出ないのかコボルトは倒れることはなかった。


「ガウ~!」


 くるりとこちらに振り返ってしまったコボルト、残念だけどその行動は悪手(あくしゅ)だよ。


「ポチ、足に噛み付け!」


 怒りに任せてポチに背中を向けてしまったコボルトは、哀れポチの鋭い歯に右足を噛みちぎられたのでした。


「よし、よくやったぞポチ。後は僕がやるから下がるんだ」


 片足を失って血もドクドクと体から失われていくコボルトに歩み寄り、僕はテイムボールを右手に出した。


《テイム》!!


 と唱えると右手にテニスボールくらいの大きさ球が現れる。これをモンスターにぶつけることができれば、相手が弱った状態の時には指輪という形でテイムが成功する。


 僕が投げた半透明の白いボールがコボルトの頭部に当たると、相手は粒子状の光球となりボールの中に吸い込まれたんだけど、ポチが噛みちぎった右足もコボルトの体と一緒にボールの中に入っていった。なんだか色々と疑問が浮かぶ光景だけど、どういう仕組みなのかとかは考えないことにしている。だって、ファンタジー世界だものね。


 コボルトが収まったボールは相手がかなり弱っていたこともあり、あっさりと指輪になった。

 他の契約獣と同じく『鉄』のモンスターリングだ。


『汝 魔獣を使役せんと望む者よ モンスター:コボルトに真名を授けよ』


「はいはい、え~とそうだな、雌だもんな可愛らしい名前がいいかな。茶色い犬顔の小人……思いつかね~。『わかば』でいいかな、俺がいつも()んでたタバコなんだけどさ」


『了承した 魔獣コボルトは 今よりわかばとなり この者 ヒューマン族マモルの 使役獣となす』


 これで右手親指以外の指にモンスターリングが嵌められることになった。

 どれがどのモンスターなのかわからなくなりそうだけど、確かめる方法もあるのかな?


「とりあえずわかばを呼び出すか」


《わかば召喚》!!


 指輪が光輝く粒子となり指から離れ、地面でコボルトの形に集束した。

 そこには犬顔の小人がいてこちらを見上げている。

 ポチにやられた足がどうなるのか少し心配だったけど、ちゃんと足はつながっている。


「ガウッ」


 わかばは茶色の毛が全身に生えているのだが、手足は人間のように二足歩行を行うため普通の犬のそれとは違っている。

 だけど両足で立っているから、色々と……すっぽんぽんだ……。


 とりあえずわかばには落ちている竹槍を渡してポチと僕の間に位置取ってもらう。

 街に戻ったら装備を整えてあげよう。

 むしろ僕の装備も何とかしないとイケないな、だって買い物にでも出かけるような簡単な服装だしね。


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