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第3話:男の子の夢、そして現代人にはきつい運動

 説明の入れ方がなんとも歪になってしまいました。

 しばらくして川岸に着いた僕たちは足を止め休憩することにした。

 そこで僕はカーライルさんに準交易都市レバトンについていくつか質問をしてみたので、それを紹介させてもらおう。



=======================

【準交易都市レバトン】とその周辺

・レバトン伯爵が代々治めてきた都市

・人口は10万人と国全体で見ると小規模だが北方領土の中では中規模の都市

・レバトンから西に1日進むと港湾都市キューセルがあり、北方地帯の物資集積及び有事の際の要衝として発展した

・特産として『石鹸石』という人工ではない石鹸があり、それを粉末に加工し箱詰めして付加価値を付けて輸出している

・レバトン周辺には北にいくつかの村、東に石鹸石やその他の鉱物が取れる鉱山、西には荒涼とした荒野、南にレバトンよりも小さな町が幾つかある

・マール王国にとって北方領土は今もまだ未開発といえる地域が多いという認識がされている

・最北の山に神の生まれ変わりと言われる巨獣系モンスターが眠っていると言われている

========================



「残念なことに王都の人間には北部の土地は未開の地だと見られていてな、我が主レバトン伯爵は王都に行くと肩身の狭い思いをされているそうだ。私にとっては少し肌寒いだけで住み心地のいい土地なのだがな。

 ……リンダ様もなんとか領内を発展させようと苦心されている。

 まあ、私が話せるのはこの程度のことだけだな」 モフモフ


「そうですか、でもマール王国の統治は長い歴史があるのにどうして北部の開発が行われていないんですか?」 プニプニ


 話をしている最中もカーライルさんはラヴィをモフモフと抱きかかえ、僕はブーブのオッパイ肌をプニプニと堪能していた。


「それは、王国の人口に対して国土があまりにも広いからだ。

 マール王国の建国より凡そ三千年経つ、現在王国の人口は1億人と言われているが、『建国戦争』と呼ばれる大きな戦がこの大陸で起きた時には未だ一千万程だったという。

 そして当然のことながら国政で優先されるのは食料の供給だったそうだ、そのため肥沃(ひよく)な大地が広がる南部及び東部地域の開発は優先的に行われ、山脈が連なる北部は開発が遅れた。

 さらにこの大陸の最北部には『ガデス』がいるとされている」 モフモフ


「ガデス?なんですかそれ」 プニプニ


「知らんのか?まあ田舎の生まれならば知らないということもあるのだろが、普通は子供の頃に親から教えられるものなのだがな。

 そうだな……、

 『ガデス その威容大地を震わす ガデス その咆哮雲霞を散らす ガデス  地より伸び天を貫く』と、まぁそんな詩が幾つもあるのだが、我々が自らを巨人族と呼称するのが恥ずかしくなるほど巨大なモンスタ―らしい。らしい、と言うのは誰も見たことがないからだがな。

 今向かっているレバトンから十日ほど歩けばマール王国最北の砦がある、そこから先は魔境とされ人類未踏の地だ。

 そして魔境の中心に巨大な竪穴が有りそこにガデスが眠ると古文書には記されている、まあこれも私が小さい頃に親に教わったことだがな」 モフモフ


「へぇ~、超巨大なモンスターですか。見てみたいなぁ~」 プニプニ


「いかんぞ。魔境に入ることが許されているのは王立調査団のみだ。不法侵入を試みる者を取り締まるためにエルフ族の戦士が砦に詰めているからな、ヒューマン族のマモルでは気づくまもなくあっさりと捕縛されることだろう」 モフモフ


「もう冗談ですよ。ガデスって言うモンスターは見てみたいですけど、魔境なんて恐ろしいところに近づくつもりはありませんからね。僕はできる限り長生きしたいんです」 プニプニ


 神様からそうするように言われているんだからさ。


「それはそうだろうな、精鋭の部下を率いていたとしても魔境で二日生き抜く自信はないぞ。国に選抜された最精鋭の集団とされる王立調査団でさえ、貴重なモンスターの素材をカバンに満杯にしたらすぐさま撤退するそうだからな。

 確認されていない伝説のモンスターだとしても、寝ている子を起こすこともあるまいよ」 モフモフ


「怖や怖や、絶対に行きません!」 プニップニッ


「後衛職のテイマーが行くような場所じゃないのは確かであろうな。

 では、そろそろ行くとしよう。ここから町までは歩いて3時間ほどだ、陽が沈む前までには十分帰ることができる」 モフモフ~


 カーライルさんはそう言うと僕の肩に届くくらいの長さの長剣を腰に差し、これまた僕の姿がまるまる隠れてしまう盾を背中に担いだ。

 ちなみに、川岸についてから見せてもらったカーライルさんのギルドカードにはこういう情報が載っていた。



------------------------

【ステータス】

 名前:カーライル・バーバリン

 種族:巨人族

 性別:男

 年齢:52

 ジョブ:重戦士 Lv.48 

     騎士  Lv.25

------------------------



 さっき見た僕のステータスにはスキルも載っていたのにどうしてこれには無いのか聞くと、自分が表示したい項目のみを表示させることができるらしい。

 重戦士というのは、金属で出来た装備の重量を軽減させることができるらしく、カーライルさんは普段は今着ている様な革鎧ではなく金属の鎧と槌や斧を装備するらしい。今日は自分の趣味を隠れて楽しむためにお忍びで来ているので、普段とは違う装いなんだそうだ。

 巨人族の身長だけでバレてる気もするけど……。




◇◆◇◆◇◆◇◆



「しかし大きな川ですね~、かろうじて向こう岸が見えますけど泳いで渡るのは無理でしょう?」


 2時間ほど戦闘を挟みながらもなんとかカーライルさんについて進んでいる。こんなに長い時間歩いたのは初めてだぁ~、もう足が悲鳴をあげてるよ。

 途中虫系のモンスターやポチと同じヴォルフ、体に刺が生えたトカゲなんかを倒しながら(主にカーライルさんが)着実にレバトンへと近づいている。


「泳ぐ?このユーロン川をか!無理に決まってる、水の中に足を入れただけでダイナフィッシュに指を引きちぎられてしまうぞ」


 ダイナフィッシュ?なんじゃそりゃ、獰猛なピラニアってことかな。


「で、ですよね~」


「レバトンの渡し船に乗らない限り対岸に行くのは無理だ。それか空を飛べるモンスターを利用しなければな」


 そうか、大きな鳥をテイムすれば自由に空を飛ぶこともできるんだ。ドラゴンなんかもいたりして、異世界ってすごいや。


「カーライルさんみたいな大きな人でも乗せれるモンスターもいるんですか?」


「む~そうだな、私は乗ったことはないがワイバーンやグリフォン、ガルーダくらいの大きさがあれば私でも乗れると思うぞ」


 巨人族を乗せても飛べるくらいなら僕でも十分空を駆けることができる。なんとしても飛行タイプのモンスターをテイムするぞ!


「そ、それでこの辺りに手頃なモンスターはいますか?」


「手頃?飛ぶモンスターのことか?そうだな、教えたと思うが北部地域には山が多い。山岳地帯に行けばワイバーンもいるし、ガルーダも探せば見つけられるだろうな。しかし、見つけることが出来たとしてもそう簡単にはテイムすることはできないぞ。

 飛行タイプの契約獣は高値で取引される、というのも相手は空を飛んでいるからテイムボールを相手に当てるのは難しいし、最低でも『トリプル』でないと成功しないだろう」



 この世界の人間にはすべからくジョブが与えられる。

 ひとりひとりに神の加護と考えられているジョブが1~5個与えられるとされていて、

 ひとつだけなら『シングル』

 ふたつで『ダブル』

 みっつの場合は『トリプル』と呼ばれる。

 そして数字が低いほどジョブの適性が高いとみなされていて、具体的に言えば到達できるジョブレベルの最大値が高くなる。

 ジョブが五つの人は1つずつの最高レベルが20まで。よっつの人は40、トリプル60、ダブル80、シングル100となる。

 レベルが上がるにつれてそのジョブで使えるスキルの数が増えていく。そのためレベルの最大値が高いものほど多くのスキルを得られるわけだ。更に、ジョブの数の違いは能力の違いとしても現れる。シングルのレベル10とダブルのレベル10ではシングルのほうが有能だとされる。

 確たる証はないらしいけどね。



「そうですか……」


「まあテイマー持ちなら誰だって強いモンスターをテイムしたいと思うものさ。私たち巨人族にだって目標とするものがある。

 一族で最も強靭な肉体を持つものだけが装備することを許される『破城槌』と言う武器を扱えるようになること。それが巨人族の男の目標なのだ」


 破城槌をひとりでって、いや僕が想像している破城槌とはまた別なものなのかもしれないな。


「強靭な肉体ですか、でもカーライルさんは僕の身長くらいある長い剣を扱えるんでしょう?十分力はあるんじゃないんですか」


「これか?こんなの重戦士にとっては短剣のようなものだ。こうして「ブンブンッ」自由自在に使えないようじゃ巨人族では一人前とは言えんのさ」


 カーライルさんは長剣を抜き放ち、僕の目では捉えられないような速さで剣を……振り回したのかな?ものすごい風が僕に当たったのは感じたんだけど。


「どうだ、なかなかのものだろう。これでも生まれて一年も経たずに剣をにぎ「ボニョンッ」ぬわ!なんだ!?」


 ドヤ顔で話していたカーライルさんの頭に空から白い何かが突然降ってきた。


 あの姿はスライムかな?


《観察眼》!!



------------------------

【ステータス】

 レベル:1(Next 0/100)

 名前:亜種ホワイトスライム

 性別:なし

 状態:混乱


【スキル】

 透明化

------------------------



 え、亜種?……亜種!!!


「カ、カーライルさん動かないでください!顔にスライムが頭に付いてるだけです!僕が剥がしますから、しゃがんでください」


「くそ、スライムゥ~!おのれぃ騎士の頭に張り付くとは!ゆる、オヴェヴェ、ヴォヴォ~」


「ウォン!ウォ~ン!」


 いきなりのパニックにポチも騒ぎ立てる。

 頭に落ちたスライムはデロ~ンとカーライルさんの口にまで伸びていた。

 それから苦しげに動き回る巨人を何とかしゃがませて、僕はどうにか剥がすことに成功した。

 

「ウェッホゲッホン!あぁ~苦しかった、こいつが私の顔に張り付いておったのか。おのれぃ、一刀両断にしてくれん!マモル、そいつをこちらに放れ!」


 恐ろしい形相になって剥がし取ったスライムを抱える僕を睨んできてるけど、せっかくの亜種スライムを一刀両断だなんて勿体無い。


「ダメです!こいつは僕がテイムしますから、剣を収めて!ポチも落ち着け!」


「ウォンウォン!ウォンウォン!」


「なにぃ~テイムだと!スライムなんてテイムしてどうするというのだ!?もうすでに1匹持っているではないか」


「確かに僕にはブーブがいますけど、こいつは普通のスライムとは違うんですよ!」


「……違う?確かに珍しいと言われるホワイトスライムではあるが、見た感じ……あ、そうか!観察眼を使ったのだな」


 右手に剣を持ったまま僕に抱えられたスライムを恐ろしい形相で見下ろしていたカーライルさんがやっと落ち着いてくれたみたいだ。


「スキルを使って確認したところ、このスライムが亜種ホワイトスライムだということがわかりました。

 だからテイムしたいんです、いいでしょうか?」


「そういうことならば仕方なし。モンスターリングを売ることはマモルのようなテイマーにとって生活の糧を得るために必要なことだからな。

 好きにせよ」


 僕はカーライルさんに「ありがとうございます」と礼を言ってから、スライムにテイムボールを放ち、無事に『宝石付きの鉄の指輪』を手にすることが出来た。

 亜種というと禍々しい姿を連想するかもしれないけど、実際のところ姿形に同種の個体との差異は無いみたいだ。僕が契約したこの亜種ホワイトスライムの『スケさん』とグリーンスライムのブーブは色が違うだけで、触り心地もオッパイ肌で違いはない。モミモミするとキモチイイ。


「……それで、そのスライムはなにができるのだ?」


「なにっていうと?」


「亜種なんだったら火や水を吹くとか、体に雷を(まと)うとか鉄の様な硬さを持つなど、そういったなにかしらのスキルがあるだろう?」


「ああ、特徴ですか……このホワイトスライムのスケさんには『透明化』っていうスキルが有りますよ」


「透明化?」


「はい、いいですか見ててください」


 透明化させようとモミモミしていたスケさんを、地面に下ろしたのだが一向にその様子がない。


「どうした、スキルを使うように言わないのか?」


 そうか、契約獣だから僕が命令しないとダメなんだ。


「そ、そうですね。ではスケさん透明になりなさい!」


 僕がそう言うとスケさんはブルルッと体を震わせ、あっという間にその姿が消えた。

 まさに透明でそこに何かが存在するのかどうかもこちらにはわからない。

 男の子にとっては夢の様な能力だ。


「なんと!完全に消えている……こんなモンスターは初めて見たぞ。本当にそこにおるのか?」


 スケさんが消えた場所にはただ地面が見えるだけで、微妙に光が屈折してるとかそういった兆候は全く見られない。

 むしろ完璧すぎて僕も少し不安になるくらい。


「ど、どうなんでしょうか?え~とスケさん、透明化を解除しなさい」


 すると一瞬でスケさんはその姿を元のように表した。


「これはまたなんとも珍妙なスキルだな。姿を隠すことができるとはおもしろい、売りに出せばさぞかし高値で取引されるだろう」


 カーライルさんの話を理解したのかスケさんがブルブルと震えている。

 売りに出すなんてとんでもないことだ!でも確かに大金にはなるのかも。

 ……あれ?


「でももう契約しちゃいましたよ、それでも売れるんですか?」


「ああ。一度契約していても契約を解除するためのスキルを使えば指輪が反応して契約前の状態に戻るそうだぞ。

 誰か知り合いのテイマーに聞いたことはないのか?」


「ええ、まだテイマーとして活動を始めて日が浅いものでして……」


「確かに鉄のモンスターリングだけを着けているゆえ推察してはいたが、もっとテイマーの事を勉強したほうがよいぞ。どんな知識も邪魔になることはないからな。

 それで契約解除のことだが、これを『解約』という。

 契約者にとって必要でなくなった時や他者に譲り渡す時、自らが死に瀕した際に行われるのだがあまり好ましい行いではないな。大抵の契約者は自分の契約獣に愛着を持っていて手放すことを良しとはしない、無論私もラヴィを手放したりはしない」


 これからテイマーとしてやっていくつもりにはなっていたけど、覚えなきゃいけないことはまだまだあるみたいだ。

 それに今日は3回テイムを使ったわけだけど何だか体がダルイ。もしかすると魔力が減ってるとかそういうこと?


「まあ後は追々……マモルどうした顔色が悪いぞ?」


「はい、なんだかダルくて、すいません」


「む、魔力が欠乏しておるのではないか?テイマーのレベルはいくつなのだ?」


「え?え~と」


《ステータス》!



------------------------

【ステータス】

 名前:マモル・サカタ

 種族:普人族

 性別:男

 年齢:25

 ジョブ:テイマーLv.1(Next 40/100)


【テイマースキル】

 ・テイム

 ・観察眼

------------------------


「あ~と、レベル1です」


「……レベル1?そ、そうか……。ちなみにスケさんとブーブそしてポチといったか、そのヴォルフは今日テイムしたのか?」


「え、そうですけど?」


「ん~~、まあ人それぞれ魔力の量には違いがあるので一概には言えんのだが、マモルは魔力を使うジョブはテイマーの他にもあるのか?」


 魔力を使うジョブ?

 僕が『シングルテイマー』だということは秘密にした方がいいって言ってたし、なんとか誤魔化したほうがいいはずなんだけど、あると言うべきか無いというべきなのか悩みどころだよ……。


「え~と無いです……」


「そうか。だとしたらマモルの持つ魔力はテイム4回分くらいだと思うぞ。今日は3回テイムして、さらに3匹とも召喚したのであれば魔力欠乏になったとしても不思議ではない。魔力が減りすぎると体の自由が効かなくなり最悪意識を失う事になる。とりあえず契約獣は指輪に戻せ、これから先の戦闘も私が受け持つ」


 あ~、こういう風に言われるとなんだか本当に体の具合がおかしい気分になってきた。


「すいませんがお願いします」


《ポチ・ブーブ・スケさん帰還》!!


 召喚していた3匹は指輪になり僕の右手の指にそれぞれ戻った。

 異世界生活初日、学ぶべきことがたくさんあるということを思い知らされた。

 


 そしてこの『スケさん』をめぐり色々と事件が起こることになるなんて、今の僕には想像できるはずもなかったんだ。


 次回準交易都市レバトンに到着

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