表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/17

二人の少女戦士と、リコーダーを吹く男【10】


 校舎の入り口にはたくさんの女生徒が集っていました。


 セレアは人垣の合間から校舎内を覗き込みます。

「何これ、すごい数。アイドルでもいるのかしら? なんなの一体」


 その人垣からリコーダーの『ソ』の音が聞こえてきました。


「え、なに? 誰が吹いているの?」


 シンデレラが剣を抜き放って言いました。

「敵がいる」


「敵!?」

 セレアはシンデレラを見て驚きました。

「なに、そのいきなりトンデモ設定。言っとくけどこれ、ほのぼの学園編だから敵とか出てこないんだからね。剣とか出されてもR15指定されてないから派手なバトルとかは無理だからね」


 すると、女生徒をかきわけて一人の旅人風の男が姿を現しました。

 男はリコーダーを突きつけ言います。

「よくぞ見破ったな、シルキースターの戦士ども」


 シンデレラが怒ったように言い返しました。

「誰がシルキースターよ! 私たちはミルキースターの戦士──」


 セレアが怒鳴ります。

「あんた達二人はもう一度【9】話のタイトルに目を通してきなさい!」


 シンデレラはいきなり大胆に服を脱ぎ始めました。

「変身よ、セレア。早く着替えて」


「え! なに、そのいきなりオプション! 設定合わせていいけど、変身って自動オートフルじゃなくて完全手動なの!?」


 シンデレラは下着姿になると空に向け、手を伸ばして叫びました。

真紅薔薇華麗変身バーラバラバラバーラバラ


 セレアが噴き出します。

「ちょっ!? なにその恥ずかしい変身呪文!」


 すると、どうでしょう!

 シンデレラに色気あるモザイクがかかり、バラの花びらに包まれた後、華麗な赤い戦闘服に変身しました。

 シンデレラはセレアに言います。

「さぁ! あなたも急いで変身するのよ、セレア!」


「絶対やりたくないから!」

 セレアは激しく拒絶しました。


 男が手持ちのリコーダーを口にくわえます。

「変身しないピンキースターなど我が敵ではない! 攻撃を喰らうがいい!」


「だから! あんただけでも【9】話のタイトルを何度も精読してきたらどうなの!」


 男はリコーダーで奇怪な高い『ド』の音を出しました。


 リコーダーから放たれる音波攻撃に、セレアは痛む頭に手を当てて苦しみました。

「な、なんなの、これ!」


 平然とした顔でシンデレラが解説します。

「音波攻撃よ」


「なんか私だけ攻撃受けててすごくムカツクんですけど!」


 シンデレラが嫌味っぽく笑ってきます。

「変身しないからよ」


「くっ──!」

 セレアは苛立ちに歯を食いしばりました。


 シンデレラはセレアを見下ろして涼しげに言います。

「変身さえすれば、この攻撃にも平然としていられるわ」


 ぐむむとセレアは歯を食いしばって頬を最大限に引きつらせながら、拳を握り締めました。

 怒りに声を震わせながら言います。

「わ、わかったわよ。私も変身すればいいんでしょ、変身すれば」

 ウラぁーと勢いよく男勝りにセレアは制服の上服を脱いで地面に叩きつけると、Tシャツ姿になりました。

 

 シンデレラが呆れたように言います。

「なにそのマトリョーシカ設定。びっくりだわ」


 セレアは顔を真っ赤にして言い返しました。

「いいでしょ! ほっといてよ!」


 リコーダー男が悔しそうにうめきます。

「くっ……! Tシャツ姿とは期待を裏切りやがって」


「ちょっ、それ悔しがるとこ違うでしょ!」

 

「さぁ、いいから早く変身よ、セレア」


「わかっているわよ! お願いだから自分のペースでやらせて!」

 セレアはシンデレラにそう言い放つと、お空に向けて手を突き上げました。

「今回の話がこういう感じだから乗ってあげてるだけなんだからね。もう二度とやらないんだからね」

 自分に言い訳してからお空に向かってカッコ良く叫びます。

「変身! 白羽の妖精天使スピリーチュアル!」


 ……。


 しばらくすると。

白いタイツ姿の森の妖精が校門の向こうから現れて、セレアに真っ白のセクシーな戦闘用制服を持ってきてくれました。


 セレアは地団駄を踏んで怒りました。

「だ・か・ら! なんで私だけそんな設定なの!」


 すると森の妖精がリコーダー男のところへと歩いていって、リコーダー男に抗議しました。


「関係ないから! その人関係ないから!」


 リコーダー男が森の妖精に何か言います。

 森の妖精は怒ってリコーダー男のリコーダーを真っ二つに壊してしまいました。


 リコーダー男が悔しそうに膝を折ります。

「くっ……! 我が武器が壊されてしまうとは。魔法少女戦士――セレア。なんて恐ろしい攻撃を秘めた戦士なんだ」


「何にもしてないから! しかもまだ着替えてもないし!」


 クククとリコーダー男が不気味に笑い出す。

「我が武器が壊されてしまったとなると仕方あるまい。こうなったら最大奥義の必殺技で二人を倒すしかないようだ」


 シンデレラが警戒しながらセレアに言います。

「出るわよ、必殺技。早く着替えなさい、セレア。攻撃が防げなくなるわよ」


 セレアは慌てて白の戦闘服に着替えました。

「わかってるわよ。急かさないで」


 リコーダー男が攻撃の構えを取ります。両手を広げて鳥の構えのように片足を上げ、

「さぁ受けてみよ! 我が最大奥義の必殺技――交響楽の舞! 華麗なる地獄のドの音!」


 セレアとシンデレラが武器を構えて警戒します。

「華麗なる地獄のドの音──!?」

「気をつけて、セレア。奴は音波攻撃を得意とするから」

「えぇ、わかっている」


 リコーダー男がぼそりと言います。

「ただし……音は尻から出る」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ