赤ずきん少女と秘密の扉【17】
セレアとシンデレラと……えーっと、以下略は
「ちょっとぉ!! フンドシ男とアリスとマナちゃんとキリギリス男までちゃんと最後まで言ってあげなさいよ!」
セレアはお空に向かって叫びました。
その様子にシンデレラが心配します。
「どうしたの? 急に」
「いいえ、大丈夫。ちょっとお空と話したかっただけだから。気にしないで」
「それよりセレア。前を見てごらんなさい。何となくこの物語の最終地点と思わしき扉が見えてきたわよ」
シンデレラに言われて、セレアは前を見ました。
長い廊下の先に一つの扉が見えます。
無駄にゴージャスです。
「どこに予算使ってんの!? この学校!!」
セレアはツッコまずにはいられませんでした。
フンドシ男が言いました。
「目的地周辺です」
「何!? その便利なカーナビ機能!」
無視してフンドシ男は言葉を続けました。
「えー、これより。入学式恒例――生徒会長という名の、この物語の主人公選抜バトルを開始する」
シンデレラが顔をしかめます。
「バトル開始ですって? もしかしてこのメンバーでバトルをやれって言うの?」
アリスと蟻人間のマナが、怖がるように二人で身を寄せて抱き合います。
「やだ怖ぁーい」
「戦いなんて無理ですぅ」
キリギリス男がギターを鳴らして歌います。
「無駄無駄無駄~やるだけ無駄~、無駄な努力はやるだけ無駄~、さんきゅーベイビーふぅーっふ」
セレアは無言で蹴りを見舞ってキリギリス男を地に沈めました。
みんなが静かになりました。
静かになったところで、セレアはフンドシ男に言いました。
「どういうことか説明して」
「説明するところだった。会話を入れてこないでほしい。
バトル開始といっても、あの扉を開かないことには始まらない。君たち以外のメンバーもあの扉の向こうで待機している。君たち新入生を迎える全校集会はこれからだ」
「なにその“戦いはこれからだ”みたいな言い方。無駄に校長ぶっているところが腹立つんですけど」
怒るセレアに、シンデレラがフンドシ男を指差して言います。
「もしかしてこの人、校長先生ってオチじゃない?」
「あ、それあり得る」
セレアがシンデレラの言葉に納得します。
フンドシ男が言いました。
「いや、それ無いし。俺も選抜メンバーだし。主人公だし」
「……」
セレアとシンデレラとアリスとマナは、疑いの目でフンドシ男を見つめました。
フンドシ男が慌てて言います。
「いや、ほんと。マジでマジで。俺、この学校とは何の関係もないし、浮気とか全然してないから。あの子とはただの遊び仲間で、普通に遊んだだけだから。深い関係とかそんなの全然ないから」
セレアは頬を引きつらせて言いました。
「意味わかんないし」
「あの子……」
シンデレラがぴくっと反応します。
セレアはシンデレラに尋ねました。
「どうかしたの?」
「何となく、この話の流れが見えてきたわ」
「話の流れって……この物語自体がものすごくどーでもよくグタグタに流れてるんですけど」
「まだ分からないの? セレア。私たちはまんまとあの子の罠にかかっていたのよ」
「あの子って誰?」
「いいから一緒に来て」
そう言って、シンデレラはセレアの片腕をつかむと、扉のところまで連れて行きました。