赤ずきん少女と五月節句【13】
セレアは教室の天井に向けて叫びました。
「ちょっとー! 12話が抜けてるんですけどー!」
隣の席からシンデレラが尋ねます。
「どうしたの? 突然」
セレアは首を横に振りました。
「別に。地の文と話したかっただけ。無意味だってことを今更思い出したわ」
「そう」
……。
誰も居ない教室に、シンデレラとセレアの二人だけが座っていました。
セレアは言いました。
「誰も来ないんだけど」
シンデレラは頷きます。
「そうみたいね」
……。
セレアはシンデレラに尋ねました。
「休校だったってオチじゃないよね?」
シンデレラは答えます。
「今日が五月五日のこどもの日で世間的に祝日であることは間違いないわね」
「それ、今日は。だよね?」
「そうね」
……。
セレアとシンデレラはひたすら人が来るのを待ちました。
いつまでもいつまでも教室で待ちました。
すると突然!
セレアが席から立ち上がりました。
「って、ちょっとこれ明らかにおかしくない!?」
シンデレラは言いました。
「あなたってほんと気が短い人ね。少しの時間も待てないのかしら?」
「いや、十二時ジャストに王子様を襲撃しようとしたあなたに言われたくないわよ。第一弾参照」
「それはもう過去の話よ」
言って、シンデレラは席を立ちました。
セレアは小首を傾げて尋ねます。
「どこに行くの?」
「私はあなたほど暇じゃないの。先に教室から出させてもらうわ」
「ちょっ!? なに、そのいきなり死亡フラグ! デス・ゲームだったら最初に死んでるんだからね!」
シンデレラはセレアを睨んで言いました。
「じゃぁあなたが先に教室を出たらどうなの? そんなに言うんだったらあなたが先に教室から出て行けばいいじゃない」
「積んでるから! 確実に死亡フラグが積みあがってるから、それ!」
「もういいわよ。いつまでもそこでウジウジしていたら? 私はここを出て行くわ」
シンデレラはそう怒ったように吐き捨てて教室を歩き出しました。
「ちょっ、待って!」
セレアはシンデレラの腕を慌てて掴みました。
シンデレラはセレアの腕を振り解こうとしながら言います。
「離しなさいよ、セレア。私だって主役なのよ。主役がこんなところで死ぬはずないじゃない」
「なんかもうすごく無理。あなたの脇役臭が凄すぎて──」
シンデレラは不快に顔をしかめ、そして自分の脇に鼻を近づけて言いました。
「失礼ね。風呂くらい毎日ちゃんと入っているわよ」
「誰もそんなこと言ってないから!」
──そんな時でした。
教室のドアを激しく開いて、一人の男が現れました。
長身で引き締まった筋肉質の体に、赤いフンドシ一丁だけを身に付けたイケメンの男でした。
男は刃の鋭いまさかりをカッコ良く肩に担いだまま、セレア達をじっと見つめます。
「だ、誰!?」
セレアとシンデレラはその体にトキメキに覚えながら体を抱き寄せて怯えます。
男は自分に親指を向けて答えました。
「今日、俺の日だから」