借り物
短編です
久しぶりに部屋を掃除するか~なんて思って、数年ぶりの大掃除をしたら、漫画が出てきた。しかも5巻~8巻という中途半端な冊数で。この漫画は、すでに20巻まで出ている超大作で、確かこの5~8巻は、俺が友人に借りた漫画のはずだ。
「コレ・・・借りパクじゃん・・・」
高校生の頃、同じクラスだった、親友とも呼べるほど仲が良かった友人から借りたんだった。アニメの続きが気になって、借りて読んだんだ。でも読み切った頃に、アニメの続きが放映されて、9巻以降は自分で買い集めたんだっけ。
長い間借りたままにしてしまっていたけど、あいつも俺に「返せ」とは言わなかったから、俺はすっかり忘れてしまったみたいだ。
「さすがに返さないとやばいよな」
とは思ったものの、あいつは実家暮らし、俺は都会に出てしまったから、帰省でもしない限り返せない。漫画数冊の為に金をかけて郵送するくらいなら、帰省のタイミングを纏うかな。
ふと、職場近くの「返品窓口」を思い出した。何でも無料で返してくれると評判の不思議な窓口。あれは店なのか、行政が始めたサービスなのか、いまいちよくわかっていないんだけど、そう言えば俺はあの窓口、使ったことなかったな。
漫画を持って、俺は受付に声をかけた。
「漫画ですね。承りました」
機械音声のように声のトーンが一定のスタッフがPCを叩き、俺は漫画を預けることに成功した。本当にお金がかからなくてびっくりだけど、コレで手間が省けた!
数日後、窓口から「確認してほしいことがある」と連絡を受けて、俺はまたあの窓口に足を運んだ。
「確認いたしましたところ、元の持ち主様からあなた宛てにメッセージが届いております」
あいつが?俺に?いったいなんだろう。
「再生いたします・・・。やっと思い出したのかよ。もう俺全巻揃えちゃったからもういらねぇよ。もうちょっと早く思い出せよな。・・・・以上です」
女性の声で、抑揚がほとんどない、AIのような喋り方で言われると、なんとなく怒りも沸きにくい。というか、そもそも俺が悪いんだし、俺が怒るのはお門違いなんだけど・・・。
受付から漫画がにゅっと出てきた。
「じゃぁ持って帰ります」
その日はそれで帰ったんだけど、掃除を続けていたら、スーツ、靴、ペン、時計とあいつが時々貸してくれたものがゴロゴロと出てきた。どれもこれも、俺が困ったときに、快く貸してくれたんだっけ。
「俺こんなにあいつから借りてたのかよ・・・」
自分の適当さに驚きつつも、同じ窓口に持って行った。もういつ借りたのかも忘れたけど、俺がこれを持っていたってしょうがないモノばかりだ。
漫画の時と同じように受付の女性に預けると、数日後にメッセージがあると連絡を受けた。
「さすがにスーツは忘れねぇだろ、バカだなお前」
「時計はもう新しいの買ったよ。ってかスマートウォッチ、お前のデータが俺のスマホに来るんだよ。お前、運動しなさすぎ」
「あのさ、こんだけ借りておいて、全部忘れてたとか、相変わらずしょうがねぇよなぁ、お前」
こんなことを、機械音声のように告げられると、だんだんむかっ腹が立ってくる。忘れてたのは俺が悪いけど、あいつも俺に直接言えばいいじゃねぇかよ!俺が返品窓口使うって、見透かされてたみたいで、なんかムカつく!!
俺は次の休みを利用して、実家に帰省した。あいつに借りた物をすべて持って。
あいつの家に行くと、あいつは居なかった。あいつの母親が、入院している病院を教えてくれた。なんで誰も俺に教えてくれなかったんだよ!
病室に着くと、色んな機械を付けられて、ベッドに寝たままのあいつが、こっちを振り向いて笑った。
「全部、お前にやる。返すのは、まだ先で良いよ」
細々とそう言ったあいつの声が、今でも妙に耳に残っている。
——俺も貸し、作っておけばよかったなぁ——
ぜってーすぐには返してやんねぇ!




