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【番外編】エレノアとリオネルの場合 ③


愛しい家族が増えた日から月日が経ち、リネアが12歳、エオルが8歳に成長した。


2人とも大きな病気もなく、すくすくと元気に育ち、12歳の誕生日を迎えたリネアは今夜、お誕生日パーティーを開催するのだ。


もちろん、お化粧は希愛(のあ)が願い出てくれた。


白とピンクの可愛らしいドレスを身に纏い、リネアはクルクルと回ってみせる。



「お母様、どう?綺麗でしょう?」



「ええ、とても素敵よ。完璧なお姫様だわ」



「姉上、綺麗です」



着替え終わったエオルも部屋にやって来て、姉姫のドレス姿を褒め称えた。


今夜のパーティーには義妹のユリルと、リオネル様の妹君のルルリア様も来られる予定だ。


ユリルは息子のユークリッド、ユリル様は娘のソフィアを連れて行くと言っていた。


ユークリッドもソフィアも、エオルと同じ8歳だ。


リネアはエオルの他に、ユークリッドとソフィアのことも溺愛していて、今夜会えるのを今か今かと楽しみにしていた。




リネアのお化粧は希愛がやってくれていて、まだ12歳ということであまり肌に負担をかけないよう、ナチュラルなお化粧を施してくれた。


スキンケアをしっかり行い、肌色を明るくする下地や美容液成分配合のフェイスパウダーを塗り、アイシャドウは肌の潤いを守りながら華やかに仕上げてくれるものを使ったと希愛が言っていた。



「リネア様、すごく可愛らしいです!やっぱりナチュラルメイクは、あどけなさの残る顔立ちに映えますね〜!保湿もしっかりやったので、これなら肌荒れも心配ないでしょう」



希愛が嬉しそうにリネアを褒めてくれる。


リネアも照れたように「ありがとう」と言い、愛らしいカーテシーを披露した。




私も希愛にお化粧をしてもらい、ドレスに着替えてパーティー会場へ向かった。


リオネル様がエオルと手を繋いで、私とリネアと合流する。



「これはこれは、可愛らしいお姫様が二人も来られたぞ」



リオネル様はお茶目にウィンクして言った。



「リオネル様ったら、私はもうお姫様なんて歳じゃありませんよ」



思わず苦笑して言うと、リオネル様は「いいや」と首を横に振った。



「君は僕にとっていつまでも素敵なお姫様だよ」



子供たちがいる目の前で、リオネル様は私の腰に手を回して甘く囁く。


照れて顔が赤くなるのが分かったが、リオネル様の言葉が心に暖かく沁みていく。


リオネル様はそうやってずっと私を守り続けてくれた。



「ありがとうございます、リオネル様」



甘い空気に満たされた廊下で、侍女たちも遠目で見守っていた。




「お父様!お母様!パーティーが始まりますわよ!」



リネアが痺れを切らしたように言うのにハッとして、リオネル様と私は慌ててお互い離れた。


見渡せば、希愛もエオルも若干呆れたような視線を寄越しているのを確認して反省する。



「ご、ごめんなさいね。急いで行きましょう」



「すまないね、今日の主役はリネアだからね」




豪華なシャンデリアの光に照らされた王宮の大広間は、既に多くの貴族たちで賑わっていた。


国王夫妻とその子供たちの登場に、貴族たちは歓声を上げた。



「リネア王女殿下、お誕生日おめでとうございます!」



「我らが姫君に栄光あれ!」



リネアは美しい所作でカーテシーを披露して皆にお礼を述べをた。


会場には大きなケーキや数々の豪華な料理が並べられ、立食式パーティーとなっている。


それらに舌鼓を打っていると、ソフィアとユークリッドがリネアにお祝いの言葉を伝えるために訪れた。



「リネア様、お誕生日おめでとうございます」



「リネア様、とてもお綺麗です」



ソフィアもユークリッドも、リネアとエオルに会えて嬉しそうだ。



「ありがとう、二人とも。ぜひケーキを食べていってね」



リネアのリクエストした大きなケーキは、リネアの大好物である苺とさくらんぼのデコレーションケーキだ。


生クリームの周りに苺味の花の形のクッキーがデコレーションされ、大粒のツヤツヤした苺とさくらんぼが上に載せられている。


子供たちに大好評のこのケーキは、希愛がアイデアを出してくれたものだ。


希愛が日本にいた頃に見たことのあるケーキだそうだ。


希愛の方を見ると、そのケーキをうっとりとした表情で食べているところだった。


今日のパーティーは無礼講ということで、希愛たち使用人たちにも楽しんで欲しいと伝えてある。


日頃あれだけ働き者の希愛が、美味しいものを食べて喜んでいる様子を見て心から安心していた。




「エレノア、良ければテラスへ行かないかい?」



リオネル様が飲み終わったシャンパンのグラスを置いて、広いテラスの方へ手を伸ばした。


リネアたちはお互い楽しそうに談笑し、その傍には希愛や侍女たちが控えている。


少しの間なら離れても問題ないだろうと、私は頷いてリオネル様に導かれるままテラスへ足を踏み入れた。


夜空に浮かぶ星たちが、まるでクリスタルのような輝きを放っている。


王宮から見える王都の夜景も相まって、テラスは幻想的な雰囲気を醸し出していた。



「リネアの誕生日ということもあって、王都の方も盛大に飾り付けなどをして祝ってくれているらしい。これだけ愛されているなんて嬉しいことだね」



「ええ、本当に。これからも幸せに育って欲しいわ」



リネアもあと数年もすれば、どこか他国に嫁ぐ可能性が出てくる。


子供はあっという間に大きくなるなと、感慨深く夜空を見上げた。




「今日はエレノアに渡したいものがあるんだ」



リオネル様はそう言って小さな箱を取り出した。


その中には揃いのデザインのブローチが入っていて、美しく繊細なレース作りのものだった。



「結婚13年目になると、『レース婚式』と呼ばれるらしいと希愛から聞いたよ。レース編みのものを贈ってお祝いするそうだ」



リオネル様が贈って下さったレース作りのブローチは、レースの糸が非常に細く繊細で、熟練の職人が長い時間と労力をかけて作るものだ。


『アンティークレースジュエリー』と呼ばれるそれは、世界にただひとつの一点物だ。


素敵なデザインのブローチを、微かに震える手で持つ。



「とても素敵ですわ」



リオネル様と揃いのブローチは、夜空の星と同じくらいキラキラと輝いて見えた。



「このところ忙しくて君と話す時間があまり無かったから、この機会にと思ったんだ。喜んでもらえて良かった」



君の笑顔が僕は一番嬉しいと、先ほどのように甘い言葉でリオネル様は囁いた。


もう咎める者はいないから、私もリオネル様の首に腕を回して強く抱き締める。



「私も寂しかったです。でもリオネル様はいつだって私を想ってくれている。それが私にはたまらなく幸福なのです」



夜の灯りが優しく私たちを包み込んだ。


会場から流れる音楽に合わせて、私とリオネル様は手を取り合い、軽やかにダンスを踊り始めた。


もつれることなく、滑らかなステップが織り成すリズムに心が踊る。


この時間が永遠に続けばいいと、私はそっと呟いた。


リオネル様は私の瞳を見つめ、静かに頷く。




二人の愛が静かに、しかし確かに深まっていく夜だった。


シリーズを読んで頂き、ありがとうございました!

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