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10 流れ星に願う

「ジンさーん、流星群見にいこ!」


 仁が牙狼から誘われたのはすこし前のこと。来週から五日間ほど流星群が見られるらしい。そういえばニュースでやっていたな。晴れの日が続くので、きれいに見えることでしょう。昔、父と見にいった記憶は遠くなってよく思いだせない。買ってもらったお菓子ばかり食べていたような気がする。


「見にいくって……山のほうに?」

「メアリーの店はまわりに明かりがないし、よく見えると思う。行ってみない?」




 そういうわけで、深夜からメアリーの店「嘉月庵」に来た。あわい荘から歩いて一時間ほど。この麓山地区はすぐ裏手が山で、住宅が少ない。店の前には、仁たちのほかにも何人かお客さんがいる。みんな上を見あげて、流星群を探しているようだ。


 雲は少なく、風もあまりない。星を見るにはいい日だろう。薄暗い店に入ると、奥からメアリーが出てきた。いつものとおり、黒いドレスだ。本人曰く現代の魔女は「魔女っぽさ」が必要なのだという。もうすこし言えば、世俗と離れる力なのだと。「メアリーは俗っぽいと思うけど」と牙狼が言うと、「そういうことじゃないのよ」と笑っていた。


「はい、いらっしゃい。明かり落としてるから気をつけて」

「うん、とりあえず飲み物をちょうだい」

「こんな夜中に開いてるんだね」

「こんなすてきな夜だからよ」


 他の客もここに星を見にきたようだ。ここは街の近くで星が見られるポイントらしい。夜中は冷えるから、風をよけ、温かいものがある店はありがたいだろう。メアリーにとっても稼げる夜なのかもしれない。


「いらっしゃいま……うっ……」


 仁と牙狼は奥の飲食コーナーに座った。店員さんが来たと思ったら、牙狼を見て一瞬尻ごみした。しかし口をキュッと結んで丁寧にメニューを差し出してくる。


「こちらがメニューでございます。お決まりになりましたらお呼びください」


 彼女はいつぞやのサキュバス、ラヴァンドラだ。裾の長いスカートに白いエプロン、いわゆるメイド姿である。このサキュバス、サキュバスらしくキスで人の精気を吸い取るのだが、メイドさんの格好をするのが趣味で、メイドさんのときはそのようなふしだらなことはしない! と決めているらしい。


 メニューには薬膳カレーや薬草茶のほか、スパイスたっぷりのホットワイン、クラフトジン、クラフトコーラ、甘酒、おしるこ、小豆がゆなどが並んでいる。


「オレはローズヒップティーがいい。ハチミツたっぷりで。ジンさんは?」

「じゃあ、甘酒を。ショウガ入りのやつ」


 外はけっこう寒かったので温かい甘酒を頼む。こうじの甘酒で、ショウガ風味だそうだ。おしること迷ったが、今晩は甘酒の気分だった。牙狼は軽く手をあげてラヴァンドラを呼ぶ。やっぱり一瞬、嫌そうな顔したよね。それを無視して注文する。


「はい、少々お待ちくださいませ」


 そうしてすこし待ったあと、出てきた甘酒はきれいな漆の器に入っていた。持った感じが柔らかくていいなあ。あと軽い。あ、やさしい甘さ。ピリッと辛いのはショウガだろう。お腹のなかから温まるなあ……。


「もうそろそろ二時だね。外出てみようか」


 ふわあとあくびをひとつ、スマホを見ながら牙狼が言った。




 外に出て、店の光が届かないところに回る。街の光もずいぶん減り、三日月が沈んだあとなので星がよく見える。流星群は深夜から明け方にかけて見られるらしい。どこから流れてくるんだろう。じいっとあちこち空を見つめる。三十分くらいすると、目が慣れてきたのか、小さな星も見つけられるようになった。


「ぼんやり広く見たほうが見つけやすいよ」


 そうなのか。仁は一点を凝視するのをやめ、大きく見ることにした。秋から冬の星座……以前プラネタリウムで聞いた記憶もあるが、あんまり覚えていないなあ。そう思ったが、わかりやすい星の並びに思いだした。あそこにある三つ星がたぶんオリオン座だ。ということは、きっとあのへんから流れ星が見えるんだろう。


「あっ」


 オリオン座の三つ星の上、天の中央からひゅっと光が走った。音もなく流れる光が見えたかと思うと、あっという間に消えてしまった。見えたことを疑うくらい、一瞬のことだった。


「今の……」


 そう言ったすぐあと、たしかにはっきりと尾を引く星を見た。


「見えた! 見えた! すごい!」

「よかったねー」


 仁は嬉しくなって、夢中で流れ星を探した。スマホで撮れないかと星空にむけてみたが、うまく撮れそうにない。まわりをみると三脚にスマホを置いて撮っている。あるいは大きなカメラを持っているか。どうやって撮ってるんだろう。




「けっこう見えるもんだなあ……」


 一時間ほどぼんやりと見ていたところ、五、六個が見えた。ほら今も。長く、すうっと尾をひいて流れていった。青いような白いような色。そして、「あっ」と思ったときには消えているのだ。本当に見たのか信じられないくらい短い。流れ星は、見えている星が流れてくるわけではない。そう知っていても、不思議な気持ちになる。


「ジンさんはなにかお願いごとした?」

「ううん、あんまり思いつかないなあ……。ずっと健康でいられるようにとか、嫌なことがないようにとか、みんなしあわせになりますようにとか」


 光った! と思ってから消えるまでに三回言えたためしがないなあ。


「流星は凶兆とも言うけど、願いごとを言うほうがなんかいいじゃない?」

「それはそうだね」


 牙狼はぐるりと星空を見渡して言った。前からいて星を見ていた人たちが、メアリーの店に入っていく。


「昔話だと、流星は天狗てんこうっていって犬みたいな精霊だそうだよ。音が出る流れ星のことらしいけど」

「へえ……」

「あ、そこ!」


 すごいねえと言いながら牙狼は流れ星を追いかけた。




 ずっと上を見ていて、首が痛くなってきたころ。仁はいきなり足になにか触れたのを感じた。ふわっと柔らかい感触。


「なに⁉」

「ワン!」


 なにかがすねに当たったのを感じて見ると、犬がいた。犬? これが天狗てんこう? 空から落ちてきちゃったのかな。いや、まさか。白と黒の、耳が半分折れている犬だ。人懐こく、仁の足に体をすりつけてくる。


「どうしたの? あ、犬?」


 気づいた牙狼がしゃがみこんで犬に触れる。犬は人見知りする様子もなく、牙狼に近よっていって尻尾を振った。首には赤い首輪がついているが、リードはつながっていない。犬は牙狼の足元でそわそわとしながらなにかを待っているようだ。


「首輪つけてるねえ。お客さんの犬かな」

「かわいいね」

「人に慣れてるねえー」


 そこにいる人たちを見まわしてみたが、犬を探してそうな人はいない。みんな上を見あげている。犬を連れてきた人がうっかり逃してしまったんだろうか。上を見ていて気づいていないんだろうか。


「はぐれちゃったのかな?」

「ちょっとお店で聞いてみよう」


 牙狼が店の入り口から、ラヴァンドラを呼んだ。ラヴァンドラが出てくると、犬は彼女の足元をうろついている。


「犬が犬飼ってるの? ちょっと、スカートに入るんじゃないわよ。踏んじゃうでしょうが」


 スカートを押さえながら、ぞんざいにラヴァンドラが言った。


「オレの犬じゃないよ。そこで見つけたんだけど飼い主さん知らない?」

「犬がいなくなったって話は聞かないわねえ」

「どこかから迷ってきちゃったのかな」


 街から迷いこんできてしまったのだろうか。仁がしゃがんで犬をなでると、嬉しそうに尻尾を振る。本当に人懐こい。そこで仁は首輪についているタグの文字に気づいた。かすれているが、読めそうだ。


「これ、なんだろ。なんとか町って書いてありそう。遠藤さん?」

「ああ、これは城前町しろまえまちだと思う。遠藤さんだね」


 城前町はここの山をおりて二十分くらいだろうか。奥からメアリーもやってきて、犬をのぞきこんで言った。


「ほー、迷い犬ねえ」

「警察か保健所に連絡来てないか聞いてみます?」


 仁の言葉に、メアリーは頭を掻いた。その必要はないというように首を振る。


「んー、いや……ガル夫、なんでも屋でしょ?」

「まあ、そうだねえ……」

「カレー、タダにしてあげる。飼い主さんを探してきて。店にいられても困るし」


 牙狼はしかたないなあとうなずいて立ちあがった。おすわりしていた犬も一緒に立ちあがる。そわそわと後ろ足が地面を踏んだ。


「いいよ。探しに行こうか。ええと――」


 そこで気づいた。住所と名字しか書かれていない。この子の名前がわからない。


「……とりあえずの名前がないと困るねえ」


 遠藤さんでもいいけど。なにかいいのある? と見まわすと、メアリーが答えた。


「背中が黒でお腹が白だから、おにぎりちゃんとか」

「まあ、いいか。行くよ、おにぎりちゃん」


 メアリーは、うろうろそわそわとしているおにぎりちゃんの黒い鼻をつついた。


「アブラナタナルバ、あなたの行く先にしあわせがあるように」




 朝早いし、城前町までこの子が歩くままに探してみよう。仁と牙狼はおにぎりちゃんにロープをつけ、山をおりる。おにぎりちゃんは歩いていたかと思うと、突然走り出した。仁が引っ張られながら急いで追いかけると、ピタッと止まってそこの地面の匂いをかぎはじめる。まったく動かない。車が来ると伏せて待っている。捕まえてやろうとでもいうのだろうか。押さえていないと飛び出しそうだ。


 そうこうしているうちに、ここらへんが城前町だ。天守閣が見える。ああ、だから城前か……と仁はみょうなところで感心した。むこうから、犬の散歩している人が歩いてきた。ご夫婦だろうか。柴犬を連れている。このへんの人だとしたら、知っているかもしれない。


「おはようございます」

「ああ、おはようございます」


 声をかけると、夫婦は柴犬を押さえた。牙狼もよっていこうとするおにぎりちゃんを押さえて聞く。


「この犬、迷子みたいなんですけど、ここらへんで見ませんでしたか?」

「ボーダーコリー? そうねえ……昔、仲良くしてもらった子はいたわね」


 そんな話をしていると、柴犬のほうからふんふん鼻を近づけてきた。おにぎりちゃんも鼻をくっつける。よかった、仲は悪くなさそうだ。お互いに匂いをかぎ、くるくると回って挨拶をしている。リードが絡むのを直しながら、夫婦が言った。


「あら、大丈夫なの。この子は、いきなり噛みつきにいくので他の犬と会わせられないんですが、その子とは仲が良くて」

「そうそう、その子にそっくりだ。名前はなんて言ったかなあ」


 へえと牙狼と仁は顔を見あわせた。


「その子って、どこのおたくでした? 遠藤さんじゃないですか?」

「さあ、名字までは……」

「たしか、そこの角を曲がったとこだよ。だいぶ前に引っ越したと聞いたけどなあ」


 夫婦にお礼を言って別れる。その家に行くと、表札は「遠藤」ではなかった。犬を飼っている様子もない。朝早いので、わざわざ起こして話を聞くわけにもいくまい。




「どうしようねえ……」


 そんなことを話していると、じっと家を見ていたおにぎりちゃんは急に走っていって、隣の家の門の下をくぐって、するんと通り抜けてしまった。引っ張られた仁は門にぶつかりそうになりながら、おにぎりちゃんに呼びかける。


「わ! どうしたの⁉」


 ロープが外れて、おにぎりちゃんだけがなかに入っていってしまう。仁は慌てて呼び戻そうとして手を伸ばす。けれどもおにぎりちゃんは走って奥に行ってしまった。ここからだと家の影になっていて見えない。


「そっち行けないよ」

「庭に人がいそうだね。早く捕まえたほうがいいかも」


 そう言っているうちに、おにぎりちゃんの鳴き声がした。ワン! ワン! 変な鳴きかただ。切羽詰まったような。仁たちになにかを知らせようとしているような。


 二人は脇の細い道を入って、塀の上から庭をのぞいてみる。仁ははじめ、踏み石に洗濯物が落ちているのかと思った。そうではない。手足があって、わずかだがもぞもぞと動いている。人だ。そう思っても、仁はすぐには動けなかった。


「おじゃまします!」


 牙狼が塀を蹴って飛びあがり、ひょいっとなかに入る。洗濯物のかたまりと思ったのは、倒れている人だった。仁も急いで塀をよじのぼろうとして届かず、門に戻ってよじのぼった。おじいさんがひとり、広い庭に倒れていた。


「大丈夫ですか?」

「……あ」


 牙狼が聞くが、おじいさんは起き上がれないようだ。でも意識はある。痛みで大きな声を出せないのだろう。


「救急車よびます?」

「いや……」


 おじいさんは呼ばなくてもいいというように顔をしかめた。


「足動かせます?」

「痛くて動かん……」

「大腿骨折ったかなー。仁さん、救急車呼んで。おじいさん、ここの住所言える?」


 仁はスマホを取り出して電話をかける。おじいさんが言ったとおり伝えると、今の様子はと返ってきた。


「頭うってない?」

「肩はうった」

「痛い? 鎖骨も折れてるかも。動かさないでね」


 その一方で、おにぎりちゃんは心配そうにおじいさんに鼻を押しつけた。おじいさんのほうもおにぎりちゃんを見て、そして驚いた。手を伸ばすと、おにぎりちゃんは舌を出して、おじいさんの顔を舐めた。


「おまえ、もしかしてオセロちゃんか……?」




 ここは麓山から歩いて一時間くらい。かちノ町だ。救急車を見送ったあと、仁と牙狼はおにぎりちゃんと、この住宅街に来ていた。古い家に混じってアパートやマンションが建っている。街の中心部に近く、いろいろな家があった。


 もう陽はのぼりきっていて、あたりは明るい。街はざわざわとして人も車も行き交っている。マンションの三階、「遠藤」と書かれたチャイムを押すと、ちょっとのあとゆっくりとドアが開いた。


「こんにちは、早くにすみません。遠藤さんですね?」

「は、はあ……」


 女の人が警戒しながらドアを開けてきた。怖がらせないように牙狼が前に出て、にこやかに挨拶をする。


「すみません。おたくのわんちゃんを拾ったのですが」

「犬? いいえ、うちは飼っていません」


 そんなはずはないと、遠藤さんは奇妙な顔を返した。そうだろう、今は飼っていないのだから。


「オセロちゃん……この子が、どうしても会いたいっていうんですよ」


 仁が言うと、牙狼の後ろから犬が飛び出した。女の人の足に飛びかかると、抱きつくようにしてすりよった。尻尾がぶるんぶるん回っている。足がちゃかちゃかと床を引っかくように小さく跳ね回った。


「オセロ⁉」

「よかったね、オセロちゃん」

「なんで……オセロはずっと前に……」


 さっきのおじいさんが言っていた。よくおやつをもらいにきていた隣の家のボーダーコリーは、もう何年も前に死んでいると。住んでいた人はその後、引っ越していった。たしか徒ノ町だったと思う、と。プライバシーもなにもないな……と仁は思ったが、そこから探すのは、オセロちゃんの鼻が頼りになった。


「うん。この子は幽霊なんだ」


 しゃがんでオセロちゃんに手を回した遠藤さんに、牙狼が状況を説明する。


「幽霊……」

「ええと、精気が形をもった精霊の一種で……人の念とかが核になったものだね」


 それからどう言ったらいいのかとすこし考え、こう言った。


「あなたの念か、それともあなたのところに残ったオセロちゃんの念か、そういうものだと思う」

「どうして……」


 遠藤さんは手で顔をおおったが、心当たりがあったと顔をあげた。その顔はもう泣きそうで、嬉しさと困惑と心苦しさが混じっていた。


「昨日の夜、流星群に願ったんです。オセロがむこうでしあわせだといいなって」

「たぶんそれが精気を集めて幽霊になったんだろうねえ」

「そう……ですか……」


 遠藤さんはオセロちゃんを抱いて泣いた。オセロちゃんのほうはぺろぺろと彼女の口元を舐めている。


「ごめんね、オセロ」


 遠藤さんはオセロちゃんに舐められながら、とつとつとこぼす。


「この子が歳をとって、もう動くのが大変なのに、私は散歩のとき、早く帰りたくて引っ張ってしまったんです。この子は苦しそうにしてその場にしゃがみこんでしまった。悪いことをしたんです。どうしてもっとだいじにしなかったんだろうって……」


 言葉が途切れたところで、牙狼が口をはさんだ。


「麓山にはよく行ってたんですか?」

「はい、散歩で行って、走らせてました。フリスビーが好きだったので」

「それでオセロちゃんは麓山に現れたのかもです」


 オセロちゃんは遠藤さんの膝にお手おかわりと交互にして、せわしなく足踏みをしている。くるくると回ってぴょこぴょこと跳ねた。遠藤さんが頭から背中をなでると、オセロちゃんは嬉しそうに笑って、すうっと消えてしまった。




「ガル夫さんは幽霊だってわかってたの?」

「うん。ジンさんは?」

「ぜんぜん」


 だからメアリーも警察や保健所に連絡しようとしなかったのか。幽霊ならどうしようもない。


「そうだねえ、あの子は幽霊だと自分で思ってなかったからわかりにくかったかも」


 メアリーには解決したと一報を入れ、二人で道を戻る。依頼とはいえない依頼ではあったが、牙狼たちは遠藤さんからそれなりに犬探しのお礼をもらっていた。帰れてよかったねと牙狼はにこにこしている。


「あのわんちゃんはしあわせな記憶と願いから生まれた幽霊だからね」

「結局、遠藤さんとオセロちゃん、どっちの念だったんだろ」

「うーん……簡単には区別できないけど、遠藤さんの願いにオセロちゃんの残ってた念が応えたのかなあって」


 遠藤さんがこうあってほしいと思ったのが具現化したともとれるけれど、あの様子を見るとどうもそれだけではなさそうだ。やっぱりオセロちゃんそのものではないにしても、オセロちゃんの念も混じっているのだろう。


「オセロちゃんも飼い主さんのこと大好きだったんだろうなあ」

「そうだねえ。でも」


 牙狼はちょっと言いよどんでから、こう言った。


「どんなに願っても幽霊になれないものもいる。念のいい悪いとか、気持ちの強さではないよ」

「そっか……」


 そうだったら今ごろこの世界は幽霊であふれてしまうだろう。強く伝えたいことがあるからといって言葉を残せるわけじゃない。苦しい死にかたをしたからといって、化けて出られるわけでもない。それは単に、偶然でしかない。


「だけど、オセロちゃんはかなった。それは、きっといいことだと思う」

「そうだね」


 もう日も高くなったなかを、あわい荘に戻る。


「ガル夫さんはなにを願ったの? 流れ星」

「うん? オレは今がしあわせだから、これからいろいろあってもしあわせだなあって思えたらいいなあって」

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