紅朱同赤 参 その6
京橋方面から結界に入り大阪駅を目指すとなると、素直に行けば天満橋へ出て北上するか、いったん国道1号線に出てから真っ直ぐ向かうルートが考えられる。
楓との無線では車で来た時に通った桜宮橋へ向かい、東天満の交差点で一度連絡を入れる事になっていた。
これは大阪駅から結界に入った宮崎佳穂の行動を考え、上手くいけばその辺りで鉢合わせするかも知れないという楓の目算がある。
まあ、考えられなくもない。
と、ルネは納得。
なにせ楓の読みと言うか、勘はよく当たる。
そんな事を考えながら歩いていると、視界には桜宮橋を渡り切って東天満の交差点が見える位置まで歩いて来ていた。
端正な顔が、つまんなそうな表情になっていた。
ルネにとって、撃てると思ってたのに撃てないって状況が最大の敵。
京橋から歩いて来てるのに、何も起こらない事にイライラし始めていた。
ついに東天満の交差点に着いてしまった。
着いてしまったら、連絡しなければならない。
メンドイが、しないとヤイヤイ言われる。
楓はそういうトコが物凄く細かいし、ウルサい。
「、、、はぁ」
と溜息を付いて無線を入れようと思ったら、天満橋方面から二人の男が走って来る。
人影が認識できる程度の距離で、二人して止まった。
止まって、肩で呼吸をしている。
そこで交される会話。
夜の結界内。
誰も居ない街では、男たちの会話が小さくもハッキリ聞こえて来た。
「ヤバい。マジでヤバかった、、、」
走って来たのは、ハイドロハイドとビッグさんの能力から逃げ出してきた、コーデュロイとナベアツだった。
かなりの距離を走り『ここまで来れば、、、』と、やっと足を止めた。
全速力で逃げて来たせいか、二人して肩で呼吸をしている。
後ろを振り返って確認する。
追われては、、、いない。
安心感と走るのに疲れ、ナベアツはその場に座った。
コーデュロイは自分の膝に両手を置いて、俯いて肩で大きく息を吐く。
数秒繰り返し、下を向いたまま座り込んだナベアツに言った。
「大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫や大丈夫や、、、」
答えながら、ポケットからスマホを出すナベアツ。
どうやら、ポスでさっき二人を検索掛けてるようだ。
「あの二人、いったい誰やってん、、、? 名前覚えてる?」
二人の能力を知らずに闘おうとしたのは、マジで失敗だった。
同じ意見だと、息切れを抑えながらコーデュロイが二人の名を伝えた。
「デブがビッグさんで、白Tがハイドロハイド、、、」
「出た」
五十音順に、EG使いの名前が並ぶ画面を睨むナベアツ。
「ちっ、、、何回見てもビッグさんが42万で、ハイドロハイドは35万やわ」
このセリフには、ナベアツの苛立ちが含まれていた。
賞金自体はあまり変わらない。
単純に考えると、レベル的には同じハズなのだが、、、。
やはりアイツらの言う通り、本当は一千万クラスのヤツが単に始めたばかりでまだ金額が上がって無い状態なのか、、、ブラフか?
呼吸が落ち付いて来たコーデュロイが、やっと上半身を真っ直ぐ起こした。
さすが相棒、ナベアツが何を考えてるか何となく理解し、冷静なセリフを吐いて気持ちを落ち着かせる。
「いや~~、10万の差は大きいかもよ」
「あん?」
「実際、あのデブの火球ってのは痛かったし、EG波纏ってても熱かった。それはどう考えてもアイツの方がオレより“高等”って言う事やろ?」
何も言い返せなかった。
デブの攻撃を実際に受けたのはコーデュロイだし、、、。




