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カ・ル・マ! ~天王寺の変~(改訂版)  作者: 后 陸
天王寺の変 四の章
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紅朱同赤 参 その5

 冷静になれと、自分に言い聞かすコーデュロイ。


 「ナベちゃん、、、」


 コーデュロイが前方の二人を見据えたまま、後ろ手のナベアツに声を掛けた。


 「お、おう、、、」

 「逃げろ!」


 言った瞬間、何もかもを捨てるように後ろを向いて走り出した。

 疑問も持たず、ナベアツも素早い反応で逃げ出す。


 「え、、、?」


 あまりにキレイに逃げ出したので、ビッグさんとハイドロハイドは何も出来なかった。

 5秒後、やっと我に返った。

 我に返ったら、可笑(おか)しくて笑いが止まらない。

 特にビッグさん。


 「なんやアイツら~~、めっちゃ逃げんのん早い~~~!」


 ハイドロハイドは、ちょっと面食らっていた。


 「あそこまでやられたら、(なん)も言えんな」

 「逃げたな」

 「、、、逃げたな」


 ビッグさんがキョロキョロする。

 頭を掻いた。

 困り顔。


 「あれ? 女も逃げた?」


 言われて、ハイドロハイドも周囲を見渡した。

 ゆっくり腕を伸ばし、指を差した。

 その先には、天満橋。

 その橋を渡り始めた、佳穂の後ろ姿があった。


 「逃げたな」


 呑気(のんき)に言う、ハイドロハイド。


 「どうする?」


 ビッグさんに聞かれてるのに、スマホを触りだした。


 「う~ん。追いかけるか、ヒマやし」


 気の無い返事。

 スマホ(いじ)りは止めない。


 「そやな、、、って、どっちを?」


 せかせか動いていた指が、やっと止まった。

 アイドルらしからぬイヤらしい笑いが、ハイドロハイドの顔に張り付いた。


 「そら、賞金が高い方やわ」


 触ってたスマホの画面を、ビッグさんに腕を伸ばして見せた。

 その画面には、佳穂の顔写真が映っていた。


 ポスシステムの特例。

 管理者が結界内に悪影響を及ぼすと判断すると、特別に懸賞金を懸けて処分するべき人物として挙げている者たちが居る。


 有名どころでは、速水颯太と結界を創り、逃げ込んで行方を(くら)ましているモノアイ。


 その速水颯太を倒し、警察組織に協力している安倍まゆら。


 中でも結界が出来た当初から住み着いて一切の交渉を持たない京弁天は、とんでもない金額が掛けられている。


 そんなページに、佳穂の写真も載ってあった。

 管理者が、危険と判断したのだ。


 、、、本当は、余興だろう。


 管理者が掛けた懸賞金は、30万。

 普段のシステムと違い、現金払い。

 振込とは違う嬉しさがある。


 みるみるうちにそれを見たEG使いたちが、“狩る宣言”で佳穂の賞金が上がっている。


 現在、72万。

 良い小遣い稼ぎだ。


 「ほな、追いかけよか」

 「追いかけな、もったいないもんな」

 「ホンマ勿体ないもったいない」


 ビッグさんとハイドロハイドは、仲良く天満橋へ歩き出した。



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