稚知謀大 陸 その2
あぁしは、他人と上手いこと話されへん。
目ぇも見れへん。
コミュニケーションも取れへん。
イッコの事に集中し過ぎて、よう周りに迷惑を掛けとう。
あぁしは普通に話しとう時も、気になる事あったらそっちへ意識が行ってまう。
何かを喋っとう途中でも、言葉が止まって、全部放り出して気になる事に集中してもとう。
変な子や。
あぁしは変な子。
小さい頃からそう言われとった。
周りから。
保育園でも、あぁしに話しかけてくれんのは先生らだけ。
しかも、気ぃ使うて。
一ヵ月もせんうちに、そんな先生も二人になったわ。
ただ、家では褒められた。
爺ちゃんだけには、よう褒められた。
あぁしはマトモに話しも出来へんけど、経は一回見たら頭に入った。
何でもそうやけど、一回見たら覚えれた。
そんなあぁしに面白がって、黒門の爺ちゃんが“呪”を教えてくれた。
呪の言葉は、経より簡単やった。
単純で、経のように含み言葉や繰り返しが少のうて。
あぁし、めっちゃハマった。
あぁしがハマったんは、呪は声にしたらびっくり箱みたいに何かが起こりよるからや。
呪の言葉が口から出とう時、ていうか調子良えと、出とう途中から風が流れたり寒うなったり水を固めたり、色々出来る。
経は読みながら意識を高めようけど、呪は意識を高めてから読む。
自分なりの感覚やけど、そう思っとう。
だって意識を高めとうとき、呪を読まんでも題目だけでびっくり箱が開くんやもん。
黒門の爺ちゃんが書いてくれた呪を読むんは、ホンマ楽しかった。
声に出して読んだら、次は何が起こるんかワクワクしとったし、読む度に爺ちゃんは大喜びしとう。
しゃーから、止められへんかった。
その後すぐ、爺ちゃんがあぁしに『“読む”んやのうて“唱える”に変えてみぃ』言うたからやってみたら、びっくり箱が開くんがめっちゃ早なった。
そしたら難しかった四つの呪を一緒に開くんも、いっぱつで出来るようになっとう。
園から帰ってくると爺ちゃんの膝の上で、一緒に道場におることが多くなった。
小三までは、毎日そうやった。
お爺ちゃんが、これやってみぃって言うたら、何でもすぐ出来た。
しゃーから、道場に居る人らが呪を唱える時、何でいちいち苦しい顔をしたり、何度もなんども失敗したりする意味が解らんかった。
、、、解らんかったんは、あぁしが、多分、調子に乗ってたからや。
だって、一回観たり聴いたりしたら出来とうから。




