稚知謀大 伍 その3
迷った李楠をよそに、駱嘉の全身を赤い風が渦を巻く。
――?! 駱嘉、ヤる気じゃん!
慌てて、一歩退った。
赤い風が、速度を上げる。
李楠は無意識に怯えた小動物を庇うよう、范蘇円を抱いていた。
――なんてお人好しなんだ私は!
自分にツッコむ李楠。
その間に駱嘉の纏った赤い風が物体になり、管理者の首を絞めていた。
李楠の命令を待たずに、だ。
いつでも、殺せる!
駱嘉の眼が、そう言ってる。
「ま、待て!」
先手必勝と言えど早過ぎだろうと制止したが、その前に駱嘉は戸惑っていた。
圧倒的有利な状態なのに、駱嘉が怯んでる。
管理者が、笑っていたのだ。
首を絞められ、涎を流し、顔面が鬱血し始めているのに、、、?
「あ、あああ、、、、これ、僕、殺されます、、?」
――このまま殺して、、、良いのか?
いやダメだろう。
交渉しに来たのだ。
でも、冷静なハズの駱嘉が有無を言わさず攻撃をしている。
――危険と判断したから?? コイツは、そんなにアブナイのか?!
李楠の判断が、追いつかない。
成り行きを駱嘉に任せたままで、良いのか?
――私が判断しないと!
そう思いながらも、判断材料が無い。
――どうすれば、、、良い!?
迷う李楠に庇われている范蘇円が、声をあげた。
「あ!」
思案で焦点が合って無かった李楠の眼が、管理者を見た。
どこからか、猿のような毛深い手が現れた。
猿にしては、大きい。
さらに太い。
暗くてよく見えない。
それが、宙を一掻きした。
「?!」
――消えた!?
「あ~、すごく苦しかったですよ~」
首を摩りながら、管理者が笑っていた。
観えてた猿の手も、消えていた。
管理者の首を絞めていた駱嘉の赤い風も、消えている。
「その人怖いっすね~。でも、EG使いじゃ無いですよね。術師の類? そちらでは、術師の事を何と呼ぶんですか?」
イキナリ首を絞められたっていうのに、管理者はまるで友人に話すように聞いて来た。




