稚知謀大 肆 その12
サイラーは、頭を搔く。
毛が毟り取れるんじゃないかってくらいに、掻く。
さらに噂では、モータルフラワーはあの京弁天と裏で通じているという事だ。
その噂に信憑性があるのは、今宮の“あげまんちゃん”とモータルフラワーが仲が良いと言う話しはよく聞く。
“デキてる”んじゃないかと思うくらいだ。
あげまんちゃんは元々芦原橋の“みょ~ちん”とツルむ事が多いし、そのみょ~ちんは常々『自分は弁天町の京弁天に仕える者だ』と公言している。
、、、ほら繋がった。
もう普通に考えて、モータルフラワーが京弁天と繋がってない訳が無い。
サイラーは、頭を搔く。
ポマードで固めたリーゼントが影も形も無くなるくらい、搔く。
頭を搔く日々が続いていたが、そんなところへあの“モノアイ”からとあるEG使いを匿って欲しいと連絡が来た。
あの、モノアイだ。
日本橋を根城にしている、速水颯太とこの結界創りに加わっていたEG使いだ。
サイラーは兎に角この膠着状態を何とかしたくて、モノアイと繋がりが欲しくて了解した。
やって来たのは、“ハピハピ”と言う名のEG使い。
チョーレアな能力で、レア過ぎてポスの金額がイッキに一千万を超えた。
このクラスになると賞金稼ぎがアホほど来るが、ハピハピはサイラーにとって守る価値のある能力者だった。
モノアイと同様に有名なEG使い、“レプリック”はその能力で、複製不可能と言われた伝説の“七つの大罪ソフト”をコピーし、彼も伝説になった。
そのソフトでEG使いになった者は居るが、それどころではない。
ハピハピは、自身が配信するユーチューブのライヴに参加した不特定多数の人間を、一度にEG使いに出来る能力者なのだ。
とんでもない能力だ。
とんでもないが、周囲をEG使いに囲まれたサイラーにとっては、最高の能力者だ。
ハピハピにEG使いを創らせ、それを自分の配下に置く。
そして、戦争をする。
――最高だ!
サイラーは、自分の作戦(?)に酔った。
ハピハピにも条件を呑ませ、週に一回は配信させた。
本当は毎日やらせて、どんどん仲間を増やしてやりたがったが、モノアイの紹介というのもあってあまり無理も言えない。
言えないが、ハピハピも守ってもらう手前、ウンと頷けるギリギリの条件だった。
ライヴ配信で、EGを使えるようになったと報告が来た登録者に、ハピハピが招待状を出す。
EGを使えるようになった素人は、意気揚々と自慢しにハピハピに会いに来る。
それが何故かサイラーの所に連れていかれ、免許証をコピーされ、脅され、褒められ、おだてられて威嚇され、気が付くとサイラーの手下になっている。
ついにEG使いは目標の20人を超え、サイラーは満足していた。
「やっと戦争を始められるな、、、」
リーゼントに櫛を入れながら、声に出して言っていた。




