蝶舞山揺 壱 その2
集まった青白い光は、人の顔を模っていた。
頭頂部が剥げて長髪。
左右の眼がアンバランスで、鼻は異様なほど上を向いている。
薄い唇の間から見えるのは、かろうじて残った黄色い歯。
その歯もみすぼらしく、閉まりの悪い口から容赦なく流れる涎が見た目に拍車を掛けていた。
質感もあり、確かに存在しているようだが、瞬間瞬間で、幻のように消えかけては元に戻る。
でも、、、
――生きてる、、、?
近寄れば臭い息を感じれそうな人の顔がそこにあるのに、良く見れば見るほど川面に反射った幻影のよう、常に流れを感じる。
黒いゴワついた髪。
黄疸が出てる肌の色。
茶と黄色が混じった歯。
、、、と色別も出来るのに、不思議なのはそれが本当は青白く光っているということ。
絵に描いたような電流の光りが、不規則に奔る。
拙いエレクトリック・ゴーストの特徴。
女の娘は、感慨深く見つめていた。
――あぁ、これが、、、
電気の力を借りて、霊体を実体化させる。
確実に、目に観える霊体。
エレクトリック・ゴースト。
その存在は一年ほど前、インド系アメリカ人のカマル・ハッサン・スードラによって証明された。
スードラは、次元の違う同空間、霊体が多く好む電波帯を発見。
それを立証させる事に成功した。
スードラの理論では、神、もしくは霊体は人が見える波動の外に存在しており、それを視覚化するには人が見える電波帯に落とし込んでやればいい。
大雑把に言えば、そんな理屈だ。
画期的なのは霊体に電気エネルギーを纏わり付かせ、電気が光る習性を使い連続的に視覚化した事。
さらにそれを数値化し、人が認識できる電波帯に霊体が好む電波帯と周波数を合わせる方法をプログラム化したこと。
言い方を変えれば、霊体に構築した周波数の電波帯に、任意に留まってもらう事に成功したこと。
それは霊体が存在する証明と共に、霊体との間に“意思疎通”が出来ると証明したことになる。
スードラはその霊体が好む電波帯を“EG帯”と呼び、その電波の力で光る存在となった霊体を“エレクトリック・ゴースト”と呼んだ。
これによって理論上、今まで不確かな存在だった霊の存在を誰もが観ることができ、誰もが霊能者になれるというマニュアルを開発。
現在、『七つの大罪ソフト』と呼ばれているものが、それだ。
しかしその手順があまりにも非人道的とされ、ソフトの使用は世界で禁止されている。
にも係わらず、そのソフトを使い自在にエレクトリック・ゴーストを使えるようになった者たちの事を、“EG使い”と呼んだ。