蝶舞山揺 壱 その1
12月5日。
午後四時過ぎ。
JR大阪駅。
芯の強さを感じさせる目鼻立ちの整った女の娘がひとり、改札口から出て来た。
ショートボブ。
黒髪。
眉毛は輪郭がハッキリとし、整えなくとも力強さを感じさせる。
先程言った芯の強さをアピールしていた。
改札を抜けて外へ出ると、前方には片側三車線を横切る横断歩道。
少し右手前は、それを迂回できる大きな陸橋の階段が両手を広げているようだった。
その女の娘は、階段を選んだ。
昇りきったところで周りを見回す。
彼女の視界に広がるのは、、、。
「ここが、結界内…?」
この時期はもう、夕方の五時を前に太陽が陰りを見せ始めていた。
陸橋の上から、道路を見下ろす。
信号が赤に変わる度に、停車する車の量がみるみる減っていくのが分かる。
――そう言うたら、、、
改札口から一緒に出てきた人たちの数が、異常に少ないことを思い出した。
あきらかに、少ない。
どう考えても少ない。
人の数が、、、。
過疎化が進んだ、山間部ではない。
大阪の、大阪にある、大阪駅である。
閑散としている。
夕暮れ時。
そのスジのヤツラに言わすと、逢魔が時。
「!」
女の娘の視線の端に、キラキラと光るモノが見えた。
いや、“観”えた。
陸橋の防柵に手を掛けているのだが、手の横数センチのところで青白い光が小さく寄り集まり、少しずつ鼓動を始める。
観ているとまるで、川面に写った何かの影のよう。
それが急に哭いた。
「赦っ!!」
びくっ!
驚いて、その手を引っ込める。
哭いたモノを、まじまじと《《観》》た。
どこかで見たことがあるような無いような、、、。
漫画? アニメ? それとも、、、?
日本画の教材に載るような独特のタッチで描かれた、いかにも妖怪っぽい《《モノ》》が、女の娘の眼の前でちゃんと動いていた。
昼と夜の間から、ぽつぽつとそれらは姿を現し始めてくる。