表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カ・ル・マ! ~天王寺の変~(改訂版)  作者: 后 陸
天王寺の変 一の章
3/92

仮初夜祭 その2

 さすがと言うべきは、二人(そろ)って慌てず、動作を早めず、女の()をゆったりと落ち着かせるよう、交番の中に招き入れようとした事だ。

 若い方の警官が、先に口を開いた。


 「どうしました?」


 ()えてゆっくりと、一拍()けて声を掛けた。

 ひとめ見て異常なのは分かっているが、それを口に出したら女の()が平常心を(たも)てなくなりそうに思えたから。

 先輩の警官はそれに輪を描いて、大きく手を差し出しながら女の()に言葉を掛ける。


 「もう大丈夫やで。落ち着き」


 言うと、よりいっそうの作り笑顔で女の()を迎える。

 二人揃って一歩、二歩と女の()に近づいて手を差し伸べた。

 まるで逃げ出した子猫を捕まえる時のように。

 やさしく。

 怖がらないように。

 気を使って。

 やさしく、やさしく、、、

 だが次の瞬間、そのポーズのまま二人揃って固まることになる。

 女の()が、今、世間で一番聞きたくない単語を発したからだ。


 「助けてください。あたしのカレ、“EG使い”なんです!」


 逆にその言葉を吐き出せた女の()は、これで自分を呪縛(じゅばく)しているモノから解放されるだろうと思い、思ったら全身の力が抜けてその場にへたり込んだ。


 コンクリートの、床が冷たい。

 下着を通して、冷たさがお尻に伝わる。

 安心感からか、その冷たさが気持ちいい。


 交番に居る、二人の警官。

 頼れる相手を、見上げた。

 女の()が二人の警官を見て、落胆。

 すぐに走っていた時と同じく、表情が不安に満ちてしまった。

 頼れるハズの二人の警官が、自分が言った“EG使い”という言葉を聞いた途端に固まって動けなくなっていたからだ。


 ――あぁ、、、


 四つの眼球が動いた。

 自分の後方へ。


 ――あぁ、たぶん、、、


 振り返った。

 思った通り視線の先に、アウターの持ち主が居た。

 相変わらず引き()った笑顔で、やさしく話しかけてきた。


 「佳耶(かや)、どこ行くんや?」


 気持ち悪い顔。

 その顔が、引き攣って笑う。


 女の()の予想通り、頼れるはずの二人の警官は、その後すぐ死体になった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ