蝶舞山揺 伍 その4
立場的に公にはしていないが、資産家同士、しかも世界に影響力を持つ九条家との婚姻は、ハワード・ドゥ・ウォールデン家としても願ったり叶ったり。
そして、一人娘のルネが誕生。
生まれも育ちも英国のルネは、ふと父親の母国、日本に興味を持った。
ま、それはあるある。
で、日本を調べるうちに、アニメに出会う。
これもあるある。
ジャパニメーション!
ネットで見た日本のアニメに夢中になる。
めっちゃあるある。
特にハマったのが、主人公の女性が拳銃を無敵に扱うのを観て憧れ、そこから射撃にのめり込んだ。
実力はオリンピック候補になるほどだったが、人間関係が嫌になり、招集された合宿所から逃亡。
挙句、行方不明。
半年後、彼女が発見された時には、バウンティーハンターとして生活していた。
その頃から何故かゴスロリファッションで、とにかく撃ちまくってたという。
ハワード・ドゥ・ウォールデン家としては、血族からそんな荒くれ者が出たと知られては困る。
さらにこの頃には父親と母親の仲が冷え切り、夫婦は離婚へとカウントダウンを始めていた時期だった。
名家としては、表沙汰にしたくないネタ。
公にしてない事が、功を奏した。
てなわけでイギリスゴシップに捕まる前に、半強制的に父親と日本へ。
九条家と仲が良かった小早川家、偶然同じ年頃の娘が居て、偶然同じような悩み(?)を抱えてることが解った。
両家が一緒に解決できる方法を思案した結果、金と権力で警察に新部署をつくり、非正規公務員として二人の娘をねじ込んだ。
九条家と小早川家だからできる荒業だ。
背景的にもEG使いという未知のモノが相手になるため、周囲の声を抑えるのは案外容易かった。
これも偶然だが、二人とも霊感がある体質のようで理由付けに不足は無かった。
そんな訳でデンタイが出来上がったのだが、二人の面倒を押し付けられた大下としては一体何をどうすれば良いのか未だに分からない。
四ヶ月前の速水颯太の事件も、実際には楓とルネが二人で動き、そこにあの女子高生が現れて勝手に解決してくれた。
自分は、、、他の部署への根回し。
単に、サポートしただけ。
彼女たちが動いて周りから出るクレームに対し、頭を下げてただけの時間だった。
大下係長の根本には、単にお偉いさんから怒られないよう必死な気持ちだけだったのかも知れない。
――なんて小さいんだ、、、
自分の器の小ささに、自嘲するしかない。
だって無事に定年退職したいのだ。
真正の、事なかれ主義なのだ。




