蝶舞山揺 伍 その2
「あ・あ~。写ってるんかな? え~、始めまして、で良いんかな? あたしは宮崎佳穂と言います。ん? 別に私の自己紹介はいらんか。え~これから噂の結界の中に入ります。何でかって言うと、警察に言うても何にもしてもらわれへんかったので、、、何をしてもらわれへんかったと言うと、あたしには妹がいまして、佳耶って言います。その妹があたしに連絡して来ました」
そこでひと息つくと、改めて語り始める。
「カレシは何かの、、、結界内で噂されてるEG使いのチームの人で、何やったっけ? サイ、サイ? 、、、まぁそこの上の人から言われて別のチームの人とおっきなケンカみたいなことを近々するみたいやと。妹が止めるように言うとカレシが、『俺はEG使いや』と言ったそうです。だから危ないことをするのが当たり前やと。妹は、段々暴力的になってくそんなカレシが怖いから、別れるって言いました。そしたら、、、」
少し、唇を噛んだ。
「殴られたそうです」
カメラを睨む。
その向こうに、ソイツが居るかのように。
「何回も。何回も、、、」
また、大きく息をついた。
「怖くなって一度逃げ出して交番に行ったそうです。でもすぐカレシに見つかり、そん時に交番の人は殺されたと。二人も殺されたと、、、」
数秒、佳穂はその状況を想像したのか、無言が続いた。
改めて、画面を見た。
「こんだけ言うても、こんだけの事があっても、地元の警察、あ、地元吹田なんですけど、吹田の警察は管轄が違うとか、結界内の事件は一般では扱えないとか言って全然相手にしてくれません。朝9時から行きましたが今、、、」
そう言って、画面の中の佳穂は腕時計を見た。
「え~、夕方の4時16分、担当も三回変わり、その三人の人と代わるがわる話ししましたが話が全く前に進まんので、、、一人で大阪駅に来ました」
空を見上げる。
その時の事を思い出したのか、表情に悔しさが溢れている。
カメラを見た。
「あたし、これから結界内に入ります。結界の中がネットの噂通りやったら、多分あたしはすぐ殺されちゃうかも知れません。でも、そんなことより妹を助けたいんです」
その眼に、意志がハッキリと映っていた。
「無理かも知れんけど、、、無理やろな、、、多分無理」
俯く、落ち込む。
でも、、、
「それでも、妹をほっといて何もせぇへんのは嫌なんです!」
誰に対して訴えてるのか?
観ている者すべてにか?
真正面から、カメラを見つめた。
「それに、結界の中では警察よりEG使いの方が強いって、、、好き勝手出来てしまうのんてありなんですか? 強かったら何しても良いなんて絶対おかしいです」
言って、震える。
「あたしは何よりも、妹がEG使いの男に捕まってるのが放っとけません。だから知らん人も、あたしの動画を観て何かおかしいって感じたら、何かしら言葉を発信してください。こんなおかしな世界が日本に存在するなんて、、、」
女の娘の、、、
「なんか支離滅裂で変な言葉使いになってしまってると思いますが、同じようにおかしいと言ってくれる人が出てくれれば、ちょっとでもおかしいって気持ちが広がれば嬉しいです」
、、、切実な思い。
最後に、こう言った。
「では、、、行ってきます」
そこで息を吐き、スマホの録画を止めたところで映像が切れた。




