仮初夜祭 その1
夜。
女の娘が走る。
女の娘が、外灯の下を走る。
裸足で走る。
足の裏は、真っ黒だ。
それはアスファルトの上を裸足のままで、かなりの距離を走ったから。
走りながら、女の娘は何度も後ろを振り返る。
何度も、何度も、、、
激しく吐く息は白いのに、生足。
見てるだけで寒い。
というか、ボタンを留める暇も無かったのか、羽織った男物のアウターが靡く。
靡くたびに、見え隠れする肌。
どうやらアウターの下は、インナー以外着けていない。
悲しいほどに青白い肌が、靡くたびに顕になる。
細い。
黒と、紫と、赤が、、、斑になった折れそうな肢体が、街燈の下を通るたびに照らし出されて痛々しい。
これだけの格好なのに、今まで誰にも声を掛けられなかったのは深夜2時半を回っていたのと、ここが“結界”の周辺だったのが理由だ。
女の娘が走る。
走る。
逃げているのだ。
走る。
――とにかく逃げないと、、、
走る。
――今、逃げないと!
不安の中に俯き加減だった顔がやっと希望に満ちたのは、視線の先に光る明かりが交番の常備灯だと気付いた時だった。
気付いたら、叫んでいた。
「助けてください!」
自分でもビックリするくらいの声が出ていた。
交番の扉を開ける前から、叫び出していた。
初めてじゃないだろうか、こんな大きな声が出たのは、、、。
おかげで、ちょっとカスレてしまった。
でも中の人には、充分届いた。
中に居たのは、もちろん制服警官。
駐在していた二人の警官は女の娘の声に驚いて顔を上げ、書類整理をしていた手を止めた。
二人の警官、若い方が机の上の書類に文字を書き込み、それを中年の方が机に片手を掛けて斜め上から見守っているところだった。




