我欲動偽 壱 その2
佳穂、気になる。
気になって、思わず聞いていた。
「眼ぇ悪いん?」
「いや。眼ぇ無いねん」
「! あ、ごめん。要らん事聞いてもたな」
「かまへんかまへん。単眼やねんから、眼ぇは一個で充分や」
モノアイの顔を見上げた。
嫌味や愛想で無く、ちゃんと笑ってた。
左眼を覆う黒い革のアイパッチには、深い緑色の髪をした少女の絵が描かれていた。
佳穂は、それを見た。
瞬時に思った。
――触れんとこ、、、
聞いても知らないであろう、アニメの少女キャラ。
モノアイは、いつかこのキャラの名を知ってるヤツが現れるのを心待ちにしている。
「こっからが本番やで」
真面目なトーンで、モノアイが言う。
どういう意味かは、佳穂も解かっている。
「そやな」
「妹さんを捕まえてるんはサイラーの手下で、“10センチの爆弾”って言うEG使いや」
「え? 調べてくれたん? もしかして、繋がれへんかったんって、そーゆー事?」
先っちょが言っていた“モノアイの野暮用”ってのは、妹の事を調べてくれていた、と佳穂は勘違いした。
モノアイは、ピンと来てない。
――そーゆー事ってどーゆー事?
解らないが、佳穂が自分を尊敬の眼差しで見ているので、そこはそーゆー事にしておいた。
「醬ー油ーことw」
「しょーもなっ!」
よしよし、佳穂の調子が出て来たと内心安心したモノアイ。
少し笑い、モゾモゾと懐から何やら取り出す。
「コレ、天王寺に持って行き」
「なに?」
モノアイが手に持っていたのは、黒い球体。
マットな黒。
まるで漆黒を刳り抜いたような黒。
――ん? 砲丸?
黒い球体、、、と言えば砲丸の球しか思い浮かばない佳穂。
いや、モノアイは軽そうに持っている。
ホレ、と差し出されると、佳穂は反射的に手を出していた。
「あ、、、」
出した手に、乗っけられる。
「軽っ、、、」
ビックリするくらい、重さを感じない。
羽根のような軽さだ。
大袈裟か、、、実際はハンカチ1枚くらいの重さ。
どっちにしても、砲丸を脳にイメージした佳穂にとっては異常に軽く思えた。
その黒い球体を手は動かさず、逆に顔を右左に移動したりして色んな角度から見ていた。
「何コレ?」
「妹さんを助ける“秘密兵器”や」
「?! 助ける? コレで佳耶を助けられるん?」
グイっとモノアイに、顔を近付ける佳穂。
その仕草に、モノアイはちょっと照れる。




