我欲動偽 壱 その1
足を引き摺りながら、佳穂は言われた通り日本橋の駅を確認すると左折した。
――真っ直ぐ行けば、、、
先っちょの話しでは、ソフマップなんば店跡地まで行けば、向こうから来てくれると、、、。
――モノアイ!
佳穂の眼が、求めるように前を見る。
見えた。
夜の闇に浮かんだ人影。
影だけでは誰だか解んないが、佳穂の顔が明るくなる。
確認できないが、佳穂はそれがモノアイ以外考えられない、と決めつけて走る。
足を引き摺って、ズリズリ走る。
やっと、夜でも顔が見える距離に、、、!
――モノアイ、、、やんな?
ちょっとびっくり。
立っていたのは、白髪混じりのゴマ塩ヘアー。
電話で会話をした限りでは、もっと若い男のイメージ。
言うならチャラい男のイメージだったが、前方に立っているのはなかなかのロマンスグレーではないか。
ベージュのスウィングトップ。
その下に、暖色系のチェック柄のニットシャツ。
履いているのは、これまたニットのスラックス。
完全に、おっさんファッション。
落ち着いた雰囲気は、イヤホン越しに聞いていた“調子のえぇ兄ちゃん”と真逆の印象だった。
佳穂、疑心、、。
そのせいか、4メートルほど手前で佳穂の足が止まった。
声を発するのに、勇気が要った。
「モ、、、モノアイ、、、?」
「お疲れさん。日本橋へ、ようこそ」
――この声、、、
「今までの出来事、ちゃんとメモってるか?」
――この喋り方、、、
「なんや、泣きそうな顔して。エラい事でもあったんか?」
――このしょーもないトーク、、、
「モ~ノ~ア~イ~~~!!」
佳穂は一気に顔をぐしゃぐしゃにした。
とにかく意味なく、モノアイに抱き付いた。
「なんやねん何やねん。泣くこと無いやろ」
ちょっと焦るモノアイ。
焦りながら、若い娘に抱き付かれてホントは嬉しいモノアイ。
一頻り泣くと、佳穂はモノアイから一歩離れて急にグーでパンチ。
真っ直ぐ伸びた腕は、モノアイの左胸あたりをトンっ、と小突いた。
「だから何やねん、怒っとんのか?」
「何で急に居れへんようなったんよっ!」
ガラケーが繋がらなくなったのが、今になって肚立って来た。
「ちょっと野暮用や。おっちゃんも色々あんねや」
「ふ~~ん、、、」
言いながら、もう一発。
見上げると、雰囲気に似合わないアイパッチがモノアイの片目を塞いでいた。




