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カ・ル・マ! ~天王寺の変~(改訂版)  作者: 后 陸
天王寺の変 二の章
19/191

蝶舞山揺 参 その6

 それともここに入ればサイラーの()を借りて、他のチームから自分は殴られずに済むと思ったのか、、、。


 そんな軟弱な奴は、本来チームには要らない。

 なのにチームを追い出されずに済んでいるのは、もしかしたら錦戸の(へつら)う態度がこういった集団の中では重宝(ちょうほう)されるからかも知れない。

 錦戸の諂い。


 それは、どんな奴に対しても、命令されれば素直に返事をしてパシリになれること。

 一切、歯向かわない。


 錦戸より、後からチームに入った者。

 明らかに、年下の者。

 その他諸々の者。

 とにかく、分け(へだ)てなく諂う。


 まるで命令される事に喜びを感じているように、、、。

 正に、ナチュラル・ボーン・パシリ。


 上からの指令を、しくじった者が殴られる。

 そいつが今度は、近くに居た自分より下の者を殴って気を晴らす。

 そしたら今度はそいつが、入りたての新人を殴る。


 新人は、、、どうする?

 ()さをどうやって晴らす?

 誰かを、殴る?

 錦戸か?


 だが、、、

 不思議なことに、錦戸は殴られない。

 何故か、殴られない。

 殴ったらすぐに骨が折れそうってのもあるが、理由はそんな事ではない。

 何故か、殴る気すら()せるのだ。


 卑屈な笑いに、、、。


 ただその代わり、パシリにさせる。

 今も新人に、『コーラ買って来い』と言われた。

 言われた錦戸は『ハイ』と、良い返事でパシった。


 小走りでコーラを持って来た錦戸の顔は、やっぱり卑屈だった。

 ただ今回ちょっと違ったのは、珍しく錦戸から声を掛けた事。


 「あああ・あの、、、」

 「何やねん」


 錦戸をパシらせた新人が、ウザそうに錦戸の顔を見る。


 「じじ、実は、ああっちに何か、え、え、え、えぇもん、、、あった!」

 「()えもんって何やねん」

 「み、見に行こ」

 「はぁ?」

 「行こ行こ、みみみ見に行こ」


 あの錦戸が、エラく積極的だ。

 ま、コーラを買って来てもらった手前、新人は見に行っても良いかと思ってしまった。


 「い、行こ、行こ」

 「()ぁった分ぁった、行くがな」


 それが新人の、世界の終わりだった。




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