策略謀略 陸 その4
多少の違いは有れど、戦闘要員として霊体を傍らに置く式持ちはそれを常に抑え付け、命令に従わせなければならない。
高等な人型だと当然、思考力の高さは他の霊体とは比べるまでも無い。
扱いやすい虫型や動物型は、一度主従関係を結んでしまえば滅多に覆される事は無い。
従順で、シンプルな短い命令なら確実にこなしてくれるし、扱いやすい。
しかし項目が二つ以上の複合した命令になると、まず理解できるかが問題になる。
犬を例に挙げると、『お手』と『待て』は出来るが、『お手の後に待て』と一度に二つの事をまとめて言うと、キチンと理解してくれるかアヤシクなる。
何度も練習すれば、命令の『お手』と『待て』を一つの命令として理解できるようになるし、そもそも『お手の後に待て』じゃなく、『伏せの後は待て』と動作と思考が連結しやすいようにしてやれば、二つの項目でも最初から上手く出来たりもする。
単純なモノほど、覚えさせてしまえば確実にこなしてくれるようになるのが特徴。
弱点は、イレギュラーな事が起こった時に上手く対処できないところだ。
反対に、人型は複雑な命令を理解できる。
やった事の無い事でも、説明すれば頭で理解できて行動に移せる。
非常に賢い。
同時にそれは、“人間に嘘をつける知能”も併せ持つ、ということ。
これが、やっかい。
使役されてたモノが土壇場で裏切るってのは、歴史上幾度も、しかも世界中で起こっている。
式として使われながら、自身の存在価値である三大原則を実行するチャンスを、常に狙っているからだ。
文字通り、ウソをついてでも成し遂げようとする。
式に成った瞬間、そういったモノたちの最大の目的は、自分の主を喰う事、、、になる。
今まで自分を従わせていた者を、犯す。
犯しながら、殺す。
殺しながら、喰う。
至福の時間。
それを味わうために自分の実力を隠し、自から勧んで式に成るモノもいる。
術師が式を持つならば、必ずその能力を同等以下にすべし。
そう言われるのは、今言った理由があるからだ。
ちなみに、、、
知能レベルの話しで、虫型、動物型、人型と分けたが、解り易くするための比喩に過ぎない。
つまり、霊体、幽体、物の怪、妖怪その他八百万の神々の類は、見た目と知能が一致するとは限らないという訳だ。
見た目は虫でも、知を司るモノも居れば、人の姿をしているのに欲塗れで短絡的な行動しか出来ないモノも居る。
そのモノの行動原理を知ろうとしなければ、どちらにしても自分の愚かさを思い知ることになる。
だから式を持つこと自体、“並”の術師ではできない。
そんな人型は一体でも扱うのが大変なのに、李楠が見たのは合計4体の人型。
――やっぱあれは、先頭の1体だけが式で、後ろは何か別の、、、
考えれば考えるほど、思考が止まらない!




