策略謀略 伍 その1
見廻りの時に、非常用で持たせているガラケー。
その番号から着信が入った。
出るのはウォーカーズの中でもモータルフラワーの側近、小杉統也。
非常用のガラケーだ。
掛かってきた時点で、緊急を要する事態が起こってる。
「どうした?!」
一言目から、小杉はもう緊迫感を出していた。
聞こえてくるのは、カンジの声。
後ろで響く爆発音がウルサくてよく聴こえない。
ついでにカンジが泣きながら話してくるので、余計に何を言ってるのか聞き取りにくかったが、それが現場の緊張感を伝えていた。
小杉はスグに、モータルフラワーこと矢部恭祐へ状況を伝えた。
「矢部さん!」
「どした?」
矢部は、立っていた。
動物園の、柵に向かって、、、。
その背に、小杉が緊迫感満載で必死で伝える。
「見廻りの連中が、天王寺のヤツらに襲われてるみたいっス!」
「なんやて?! 今日の見廻りは?」
「西下んチームです。EG使いのトッポが居てますけど、相手はEG使いが2人も居るらしいっス!」
「2人、、、ヤバいんか?」
「電話掛けて来たヤツが焦って何言うてるか解からんぐらい、ヤバそうっス」
矢部の面倒見の良い性格が、連絡を聞いて居ても立っても居られなくしていた。
「行く!」
「いやいや、、、矢部さん! ちょっと待って!」
小杉が止める。
言っといて、止める。
矛盾してるが、本人もソコに気付いていない。
助けに行くのは良い。
自分も助けに行きたいが、タイミングが悪い。
今、この時間帯は、京弁天から依頼されている動物園の、杭の“守”がある。
先に述べたように、設置したのはデンタイの波働なのだが、経緯はなんやかんや紆余曲折して、現在杭の“守”をしているのは京弁天から依頼を受けた通天閣のモータルフラワーである矢部恭介だ。
そしてこの“守”という作業は、決まった時間、難しい場合は、一定時間以上の間隔を空けず、呪詛を込める作業の事を言う。
ちなみに、、、
モータルフラワーは呪術師では無いので、呪詛は唱えられない、、、ってか知らない。
その代わりに京弁天から教えて貰ったEG波の波形そのものを真似て、波動を呪詛のようなものに変えて流し込む作業をしている。
今、その作業の真最中というわけだ。
でも小杉から聞いてしまった以上、ウォーカーズのメンバーが心配になる。
どうする?
一瞬思案して、矢部はスマホを取り出した。
出して、仲の良いEG使いをコールする。
その間も慎重に、波動の波形を崩さないようにしている。
矢部のコールに応えたのは、アンニュイな声の持ち主。
「何なに~? こんな時間に珍しいなぁ~。なんかあった?」
スマホ越しに聞こえる甘ったるい声は、今宮の“あげまんちゃん”だ。
「頼む! あげ、助けてくれ!」
矢部は早口で事情を説明すると、あげまんちゃんはスグに返事をしてくれた。
「待っとき! スグ行ったるからな! “守”を引き継ぐから矢部たん、それまで動きなや!」
矢部がチームのメンバーを思う気持ちも解かるが、京弁天からの頼まれごとの“守”の大切さも解かっている。
行かせたい。
だが矢部がメンバーの助っ人に行くには、確実に自分が引き継げる状態にしてからでないと行かせられない。
何故なら、京弁天の命令は“絶対”なのだから。
結界内で生き残ろうと思ったら、京弁天に逆らってはイケナイ。
結界内では彼女が頂点であり、存在事態が“絶対”なのだ。




