策略謀略 参 その1
西下の動きは速かった。
すかさず、反撃を試みる。
先手を喰らったお返しに、近藤の奥襟を掴みにいった。
素早いバックステップ。
さすが軽量級。
軽く去なされる。
解ってる。
躱されるのは、初めから解ってる。
西下は素早く走る角度を変え、斜め後ろのちょっと太った男を狙う。
狙うは、タンク。
――こっちが本命!
その動きに近藤は西下の行動を理解し、ステップを踏み直してローキックを放ちに掛かる。
その蹴りは、無視。
蹴られても、このEG使いを捕まえて落とす方が自分たちが有利になる。
「こいつっ!」
タンクが逃げようとしたが、西下の腕は胸倉を掴む!
――取った!
そう思った瞬間だった。
叭魑ッ!
――熱っ?! 何だ?
熱を、感じた。
思わず、手を引っ込めてしまった。
何か解らないが、反射的に、勝手に身体がそんな行動を取らせた。
戸惑う西下。
「おっとっと!」
言いながら、タンクが後ろに逃げる。
「サンキュー! ビネ!」
ビートイットをネイティブに発音すると、『ビネ』と聞こえると聞いてから、タンクはビートイットの事を『ビネ』と呼んでいる。
どうでもいい話。
近藤、二発目のローキック。
大袈裟に後ろに飛んで、西下はそれを躱す。
充分に“間”を取って、タンクを捕まえきれなかった自分の腕を見る。
手の甲、小指よりのところに小さなちいさな傷が出来ていた。
赤くなっている。
――火傷??
これは、攻撃だ。
もう一人のEG使いによる、西下への攻撃。
小さな火傷。
本当に小さな傷。
受けるダメージの割合で考えると、全然大した事のない、気にする事のない火傷。
戦闘中ともなれば、尚更だ。
例えるなら、熱せられた熱いハリガネを、ちょん、と当てられた感覚。
熱いが、我慢できる。
それが来ると解っていれば、無視できるくらいの熱さ、痛さ。
西下なら、気合を入れれば痕も残らないのではないかと思うくらいの、小さな攻撃。
だが、、、。
まったくの無防備で不意にこれをやられると、人間の条件反射で身体を引いてしまう。
火に対し、人は防御してしまう。




