策略謀略 弐 その5
先程アホ晴は円に対し、正式に依頼した形と言っていた。
それは反対に依頼者として加茂家の名が出たら、言い逃れは出来ないということ。
つまり、、、名前が出たらオマエも敵として認識して良いんだなと、念を押しているのだ。
もっと平たく言えば、名前が出た瞬間、マジでオマエと加茂家を潰しに行くぞと脅している。
四術宗家に対抗して創られた御門家のひとつ、風御門。
その性質は四術宗家で風属性を司るのと同じく、主に道を外した術師の粛清を担う。
そんな風御門家、さらに関西道具屋最大手の加茂家を相手にしても、たった一人で戦える自信がこの円には有るらしい。
結界内最強の使い手、“京弁天”の名は伊達じゃない、と言ったところか、、、。
しかもアホ晴は、その自信の源を知っている。
知ってるからこそ、こう答えた。
「そん時は、ボクが、キッチリ、弟の首を持って来るから、それで、、、な」
アホ晴の言葉に、白虎が笑った、、、ように見えた。
円は手酌をやる。
猪口を口元へ持って行き、そのポーズのまま聞いた。
「弟より、家が大事なんや、、、?」
これにはさすがに、珍晴は笑顔無く答えた。
「次期、、、当主やからな」
ジッと見る。
見つめる。
呼吸、鼓動を感じる。
纏う空気を感じる。
円は理解した。
口元の猪口を一気に開け、タン! と膳に置く。
「それでええわ。珍晴、それで納得したるわ」
真摯に答える態度に、無事、円の中でアホ晴から珍晴に戻った。
「あ~~! 良かったぁ~~!」
そう言うと、珍晴はその場で大の字になって寝転んだ。
「腕か足か、出さなアカン思てたから良かったわ~~」
言ってチラッと円を見る。
「ウチをどんな眼で見とんねん」
「いや~、コウキ様がご立腹になったら、そうなるやん?」
と言って、今度はチラリと白虎を見る。
「ワシは人ではないが“ヒトデナシ”ではないぞ」
「上手いこと言う! コウキ様は心も高貴なお方で良かった!」
肩の荷が下りたのか、珍晴は早くもいつもの饒舌に戻っていた。
「そうそう。まゆらが結界に来てるって知ってた?」
「まゆらが?」
思った通り、まゆらの名前が出た途端、心配顔になる。
昔からそうだ。
どういう訳だか、何かとまゆらの世話を焼いている。
「円ちゃん、可愛がってたやろ。雰囲気そのままやけど、大きぃなっとるで」
「ウチは入学式ん時に会うとるけどな。アンタより会うとるわ」
「なんや深刻な貌しとったで」
ひとこと多い珍晴。
ワザとそうやって、円の反応を楽しんでる。
ちょっとでもさっきの仕返しをしてやろうと考える、性格の悪い珍晴だった。




