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カ・ル・マ! ~天王寺の変~(改訂版)  作者: 后 陸
天王寺の変 六の章
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策略謀略 弐 その4

 素早く空の徳利を引き下げ、これまた音も無く部屋を出て行く。

 これはもう、職人芸。


 「それはなにか、ウチが風御門家にこれからもず~~っと狙われるっちゅう訳か?」

 「その、、、はい、、、」


 さすがにソコは、言い訳出来ず。


 「この、ウチがか?」


 土下座のポーズから、ゆっくりと視線を円に上げる。

 見ると大袈裟に左手を胸に当て、信じられないと言う顔を芝居仕立(しばいじた)てで珍晴に向けていた。


 「そう、、、なりますね~~」


 返答に(きゅう)する珍晴。

 円はさらに詰めて来る。


 「この、“呪禁童子(じゅごんどうじ)”のウチが、反対に術師に狙われるとは笑い話にもならんわ!」

 「ホンマやね~~」

 「なに笑とんねん! アホ!」


 可愛く、顔の前で両手を合わせてみた。


 「ごめんね。円ちゃん」

 「アンタ今からアホ晴な!」

 「呼んで呼んで! それで気ぃ済むんやったらナンボでもそう呼んで!」


 咆哮。

 白虎が、珍晴に向かって低く威嚇してきた。


 「あ、怒ってはる?」

 「言わばそちらの“お家騒動”ではないか。解決の矛先(ほこさき)を円に向けるのは、無礼(ぶれい)(きわ)まりないのではないかな? 次期当主よ」


 白虎が、喋った。


 ハッキリ。

 (よど)みの無い言葉で。

 クッキリ。

 落ち着いた声で。

 シッカリ。

 イケボの声で。


 その状況に、円も珍晴も、、、もとい、アホ晴も驚きもしなければ不思議がりもしない。

 これは普通の事なんだ。


 白虎が、人間の言葉を話す。

 口の構造がどうのとか脳が発達してるのとかそんなの無視して、この2人が生きている世界では、普通の事なのだ。


 「ええねんええねん。コウキは優しいなぁ」


 円は白虎の事を、コウキと呼んだ。

 そのコウキの頭を()でる。

 コウキも撫でやすいように、頭を(かが)めて円に近付ける。


 「なぁ、アホ晴、、、」


 白虎の頭を撫でながら、視線も合わせずに円の声が広い和室に(こぼ)れた。

 声のトーンが、先程までとは違う、、、。


 「(なん)やろ?」

 「身に掛かる火の粉は、払わなアカンよな」

 「ですよね。放っといたら熱いですもんね」

 「払ったヤツにイモ引かして、加茂家の名が出たら、イって()えんか?」


 、、、脅しだ。


 火の粉とは、円を捕縛しに来る術師。

 どうせ最悪、生死は問わないって感じで、風御門家の手練(てだ)れたちが自分を狙って来るのだろう。


 その術師を反対に捕まえ口を割らせ、芋蔓式(イモずるしき)辿(たど)った先で加茂家の名が出た場合、どうするのか?


 そう円は聞いている。



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