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カ・ル・マ! ~天王寺の変~(改訂版)  作者: 后 陸
天王寺の変 六の章
166/193

策略謀略 弐 その1

 そこは、JR弁天町駅からスグのところにある。

 地元に根付いた、地元の住民が手を合わせる場所。


 龍高院。


 比較的新しい建築だが堂宇(どうう)古格(こかく)を守っており、清雅(せいが)な空気が流れている神聖で(よどみ)みの無い()()()になっていた。


 本堂を右手に奥へ進むと、会館が出て来る。

 そこには上階に住職のスペースがあり、下階には信徒が来館した時にリラックスできる場所もある。

 そして二階には、百人ほどが一堂に会する事が出来る畳敷きの大広間(おおひろま)があった。


 今、その広間の中央に、たった一人で正座をする男が居た。


 キレイに背筋が伸びている。

 無理矢理の正座ではなく、畳に座る時に一番リラックスできるポーズがこの男にとって正座なんだろう。


 そう思わせるほどの、自然な(たたず)まい。

 喋らなければ、絵になる男。

 関西道具屋最大手加茂家次期当主、加茂珍晴(たかはる)だ。


 大広間に通されて、もう何分()ったろうか。

 何十分か、、、?

 かなり経っているが、背筋はしっかり伸びている。

 眼を閉じ、呼吸は一定。

 まるで瞑想でもしているかのような、落ち着いた空気を漂わせている。


 部屋の(ふすま)が一枚、開いた。

 珍晴からして左手側後方、一番後ろの襖になる。

 入って来たのは、作務衣(さむえ)姿の若い僧。

 足付きの盆を運んで来た。


 珍晴にではない。

 入って来た襖沿いに進み、中央に座する珍晴を横目に見ながら通り過ぎる。

 壁近くまで進むと身体を右に向け珍晴から見て正面右側奥、床の間を背にして座るようセッティングされた座椅子に合わせてその盆を置いた。

 置かれた盆の上には、酒と(さかな)が乗っていた。

 配膳に来た僧は珍晴に一瞥(いちべつ)もせず、進んだルートを戻って入って来た襖から無言で部屋を出て行った。


 さらに五分ほど経った頃に、若い僧が入って来た襖が再び開いた。

 今度は、白い虎が入って来た。


 もう一度言う。

 白い虎だ。


 それが、和室の大広間に入って来た。

 大きい。

 見た目から大きい。

 動物園で見るような大きさではない。

 その、5~6倍はありそうだ。

 ひと口で、成人男性の上半身くらい『パクリッ』といける大さと言った方が解り(やす)いか。


 毛並みも美しい白虎(びゃっこ)

 先程の僧とは違って、部屋の奥側をゆっくりと、珍晴を遠巻きに見ながらぐるりと畳の上を半周する。

 やがて作務衣姿の僧が置いた盆の後ろ、座椅子の後ろに回り込み、床の間の前で身体を横にして寝そべった。


 その間も、珍晴は呼吸を乱さない。




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