策略謀略 壱 その2
でもそんな感情は、微塵も出さない。
先っちょ、なかなかに繊細。
「まさか。そんな偶然ないやろ」
「ほんなら何で? 今カギ開けたやん?」
「結界内のコンビニのカギ、スペア全部持ってるぅ言うたら、ビビらへんw」
振り向いて自慢気な表情。
そんな先っちょの顔を、マジマジと見る佳穂。
先っちょ、テレる。
「、、、はは~~ん、悪い人やな」
その言い方で、佳穂に惚れてしまった。
「アホ。悪ない、、、こともないか。そやな」
「納得してもたやん。悪い人やん。アウトやん!」
そう言って少し笑った佳穂に、先っちょは安心した。
精神的には、まだ潰れてないみたいだ。
大したお嬢さんだと、感心した。
「落ち着いた? 自己紹介まだやったな。オレ、“先っちょ”って言うねん」
「? さ、先っちょ? それ、下ネタ?」
「アホ! ちゃうわ!」
笑えた。
2人で笑えた。
「あたしは、、、」
「モノアイの旦那から聞いてる。宮崎佳穂さんやんな」
頷いた。
「よう頑張った」
佳穂は、もう一度頷いた。
「でも、まだやで。日本橋まで行って、そっからまた歩いて、妹さん助けに行くんやろ?」
しっかり先っちょを見て、頷いた。
「そのために、休憩も必要や。飲みもん取って来るから待っとき」
「あ、パクリに行く気ぃや」
「そや。ここでの事はオレが引き受けるから、佳穂ちゃんは気にせんと、、、」
「ムリムリ。気にするわ。お金置いとこ~や」
「それは自己満。一番に出勤したヤツがネコババするだけや」
「え~。ほんだら飲みもんいらん」
佳穂、結構自己主張。
先っちょ、説得開始。
「飲まなアカン。妹助ける前に、ジブンが先倒れるで」
「そんなん言うたって、、、」
「オレが引き受ける言うたんは、後でキチンと店に説明してお金返すって事や。佳穂ちゃんは安心して飲んだらええ」
佳穂、疑心で猜疑心。
「ホンマに?」
「こう見えて、オレは結界内のコンビニと弁当屋界隈でまぁまぁ有名でな、信用あるからスペアのカギ預かってんねん。少々の事も大目に見てもらえんねん」
「信用すんで?」
「してくれてええよ」
佳穂は、大きく笑顔になった。
「解かった。飲む。しっかり休憩したら、日本橋行ってモノアイに会うて、そっから妹助けに行く!」
語気が強くなった。
それで良い。
「それそれ。その感じで行こ」
笑顔を残し、先っちょが店内に入った。
ちなみに、、、
結界内の七不思議の一つに、“コンビニ安全地帯”ってのがある。
正確な理由は解らないが、鉄道のレールと同じで何故だかコンビニもエレクトリック・ゴーストにイタズラされ難い。
そのため一般人の緊急の避難所として使われたりするが、それを逆手に取ったEG使いが勝手に居座ったり取り憑いたりするのが一時多発した。
そういった理由から信頼できるEG使いがオーナー側から依頼を受け、各店舗を警備する者が現れ始めた。
先っちょはその中でも、かなり優秀な人材だ。
その証拠に、昼間は弁当屋でも警備を請け負っている。
そんな先っちょが、ドリンクコーナーの前で立ち止まる。
悩む。
好みが解らない、、、。
外に向かい大声で、佳穂に聞く。
「何系飲む? コーヒーか? 炭酸か?」
「紅茶! ストレート!」
元気な声が返ってきた。
「はいよ!」
「あ~~、出来たら、ウェットティッシュも! 顔拭きたい!」
先っちょに甘える余裕も出る程に、、、。
「あったらな」
「あるやろ! コンビニやで!」
全身が痛い。
それでも笑えている自分が居る。
佳穂は、先っちょに感謝した。




